史上初となる大学入学共通テストが1月16、17日に終了して、いよいよ受験シーズンが本番を迎えた。少子化で子供の数が少なくなる一方で、大学進学率は年々上昇している。昨年末に文部科学省が公表した「令和2年度学校基本調査」によると、大学進学率は過去最高の54.4%となった。
受験勉強をがんばって、いい大学にさえ入れば、就職先に恵まれ、収入も安定し、幸せな一生を送ることができる──多くの日本人が信じる「学歴神話」だが、じつは風前の灯だ。年間3000組の親子を支援する、思春期の子育てアドバイザー・道山ケイさんがいう。
「近年は、大学を卒業した学生の約1割が、就職も進学もしていません。ほかにも、名門私立中学や、医学部への高い進学率を誇る高校へ入ったにもかかわらず、不登校になるケースも増えている。就職しても、会社になじめず引きこもりになるという子供も少なくありません。バブルがはじける前までは、勉強さえできれば基本的に誰でも安定した幸せを手に入れられましたが、いまの時代はそうはいきません」
100点が取れない子育てで自分のことを責めて産後うつになる
ずば抜けた「優秀さ」が人生の壁となり、その苦悩と闘った人物といえば皇后雅子さま(57才)だろう。外交官の父を持ち、自身も米・ハーバード大学を卒業した後、東大法学部を経て外務省のキャリア官僚として活躍。「スーパーエリート」の道を歩まれた雅子さまは、1993年にご結婚すると、2001年に念願の第1子である愛子さまを出産された。しかし、その3年後、適応障害との診断を受けて、長い療養生活を送ることとなる。
エリート街道を歩んできた人が、産後に精神のバランスを崩すことは多いという。『高学歴モンスター 一流大学卒の迷惑な人たち』(小学館新書)の著者で精神科医の片田珠美さんが話す。
「エリートというのは、頭がいいと同時に、がんばり屋で努力家です。勉強は努力するほど成果が出ますから、子供の頃から100点満点を取ることが当たり前になります。しかし、子育てはそうはいかない。子供が泣き止まなかったり、言うことを聞いてくれなかったり、どんなにがんばっても予測不能なことが起きます。
ここで、普通の人ならば70点くらいで満足できるのに、雅子さまのようなスーパーエリートは、100点満点じゃないと気が済まないことが多い。『この程度では、ダメだ』と自分を責めて、精神のバランスを崩しやすいのです」(片田さん・以下同)
「エリート意識」が他人に向き、攻撃的になることもある。最悪の場合、犯罪行為につながる。
「有名大学の学生による集団強姦事件などは、『特権意識』の暴走が原因です。私が学生の頃、医者と結婚したい女の子が多かったためか、医学部の男子学生は合コンの参加費がタダで、お金は女性が払っていました。有名大学の学生には、そういった場で培われた特権意識があり、一般には認められないようなことも自分だけは許されると勘違いしやすいのです」
2019年4月に東京・池袋で車を暴走させ、母子をひき殺した元高級官僚は、裁判で「自分のミスではなく、車の不良」と主張した。その心理の裏にも、「自分は特別な人間であり、間違いを犯すはずがない」という特権意識があるという指摘もある。