荒れに荒れた初場所は、追手風部屋の大栄翔が平幕優勝。十両優勝も同部屋の剣翔だったが、2人には「埼玉栄高校OB」という共通点もある。
「角界ではそれぞれの時代に“一大勢力”がある。最近では、モンゴル勢である白鵬、鶴竜、日馬富士の3横綱が優勝を独占していた時期があった。今もモンゴル出身力士は21人いて、そのうち十両以上の関取が11人と多いが、それを凌ぐのが埼玉栄グループだ。大関・貴景勝を筆頭に32人の力士がいて、関取は13人。初場所で初日から6連勝して注目された明瀬山も、埼玉栄から日大に進学した経歴です」(若手親方)
相撲強豪高校の“御三家”といえば、埼玉栄と明徳義塾(高知)、鳥取城北だが、現在、明徳義塾OBの力士は徳勝龍、志摩ノ海ら8人、鳥取城北OBは照ノ富士、逸ノ城ら14人で、埼玉栄が頭ひとつ抜けている。
「監督は30年以上の指導歴がある山田道紀氏。日大の田中英壽監督の教え子で、日大を経て角界入りする埼玉栄OBも多い。
全寮制で監督夫妻が高校生たちの食事を用意し、弁当は監督の手作り。サラダのドレッシングまで自家製というこだわりようで、好き嫌いや糖尿病を抱える部員も、食生活で改善させる。元大関・豪栄道(現・武隈親方)は、ナマ物が苦手だったが、監督が“美味しく食べないと意味がない”と、わざわざ特別に焼いて食べさせたという。個々の性格まで考えた進路相談が評判で、全国から入学希望者がやってくる」(アマチュア相撲関係者)
今後が期待される若手も多く、元横綱・琴桜の孫である琴ノ若、元横綱・大鵬の孫である王鵬、夢道鵬、鵬山の3人、貴ノ岩の甥の北天海らがいる。前出の若手親方がいう。
「一大グループというと馴れ合いのイメージがあるが、埼玉栄OBはガチンコばかり。土俵の上では先輩、後輩など関係なく全力でぶつかる。貴景勝の綱取りがかかった初場所も、初日からの4連敗のうち、2つの黒星が埼玉栄OB(大栄翔、北勝富士)相手だった」
“互助会組織”にならないのなら大歓迎である。
※週刊ポスト2021年2月12日号