国会ではコロナ対策を謳った19.2兆円の第3次補正予算が与党の賛成多数で成立したが、菅義偉・首相は、野党からどんなに追及されても、1兆円あまりのGo To予算を引っ込めようとしなかった。自らを首相にしてくれた二階俊博・自民党幹事長(全国旅行業協会会長)の大事な利権だからである。
莫大なコロナ対策予算が、利権化している現実がある。各省が3月まで(年度内)に必要な「コロナ対策」として計上した補正予算の中身を見てみると、疑問を抱かざるを得ないものも多い。たとえば環境省が、「コロナ対策」として計上した補正予算の中身を見てみよう。
●住宅の断熱リフォーム・ZEH化支援 45億円
●国立・国定公園・温泉地でのワーケーション推進 30億円
●脱炭素社会構築のための資源循環高度化設備導入促進 76億円
本予算で削られた不要不急の事業を、「コロナ禍の新たな日常において」などの枕詞をつけて復活させただけではないのか。同省の言い分を聞こう。
断熱リフォーム支援については、「コロナ禍でのテレワークなどで在宅時間が増え、自宅での消費エネルギーが増えている。断熱リフォームをして省エネ性能を高めていただくという主旨」(地球環境局地球温暖化対策課脱炭素ライフスタイル推進室)とのこと。「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺を思い出さずにはいられない。
ワーケーション推進は、「収束後に滞在型のワーケーションなどで誘客できるようにする企画や準備に対して、支援を行ないたい」(自然環境局国立公園課)のだという。
本予算の場合は、省ごとに別々の分科会でも審議されるから、無駄な事業が見つかりやすい。補正予算はそうしたチェックが甘くなる。元経産官僚の古賀茂明氏はこう憤る。
「もともと補正予算は、議論を呼ぶような予算をねじ込む場所として使われてきた。補正で“実績”を作って、翌年さらに積み増すのが霞が関官僚の典型的な手口。今回はコロナ対策の名目で額が大きいので何でも入れてしまえと、いつも以上の悪乗りが横行している」