日本国内だけでなく、世界的な関心事となっている東京五輪開催の可否。開催を強く望んでいるのは、出場予定のアスリートだけではない。巨額の出資金を支払ってきたスポンサー企業も、中止となれば大打撃は避けられないと、開催を熱望しているのだ。
スポンサー企業はすでに動き出している。五輪向けに商品の開発や販売に着手していた企業も少なくない。
寝具メーカーのエアウィーヴは豊洲の選手村で使用予定の、ダンボールをベッドフレームに使用した機能性ベッドを新たに開発。選手村での商品発表会を予定していたが、中止となった。納入予定の1万8000床のうち9000床が設置済みだというが、大会中止となった場合、これらはどうなるのか。
「選手村寝具につきましては、大会実施後は国の宿泊型青少年研修施設や地方自治体が管理する宿泊施設に寄贈するほか、地方自治体に災害・緊急時用の寝具として寄贈する予定です。大会の中止は現時点で想定しておらず、中止時の対応は組織委に聞いてほしい」(エアウィーヴ広報担当)
スポーツ用品で唯一のゴールドパートナーとなったアシックスは赤字転落の見通しとなった。同社は日本選手団向けのユニフォームの提供や一般向けの応援グッズ販売などを手掛けており、昨年7月から「JAPAN」や「TOKYO2020」などの文字がデザインされたシューズ、Tシャツ、バッグなど62種の公式ライセンス商品を発売している。このグッズ販売で200億円の収入を見込んでいた。同社の広報担当がいう。
「昨年は開催延期を受け、一部製品の販売の見直しを行ないました。現時点の売り上げはお答えできかねますが、今後に期待したいと考えます」
文具メーカーのコクヨも大会エンブレムやマスコットをあしらった文具を昨年1月に発売。2億7900万円を販売目標に掲げている。「中止」が現実味を増すなか、眠れない夜は続くことになりそうだ。
※週刊ポスト2021年2月12日号