NHK大河ドラマ『麒麟がくる』が2月7日の放送で最終回を迎える。過去の映像作品では、本能寺の変で織田信長の家臣・森蘭丸が重要な役割をになってきたという。『麒麟がくる』最終回で、信長と森蘭丸はどう描かれるのか? コラムニストで時代劇研究家のペリー荻野さんが過去の作品を紐解きながら解説する。
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ついに出た、森蘭丸!
最終回直前の『麒麟がくる』に、板垣瑞生演じる森蘭丸が登場した。織田信長の家臣として、御屋形様の身の回りの雑事をし、伝令役も果たす蘭丸。時代劇では、源義経、大石主税と「三大美少年」とも言われる人物だ。
大河ドラマで蘭丸のスタイルを確立したのは、1965年の『太閤記』の片岡孝夫だ。本能寺の変の最中、明智軍に取り囲まれ、いよいよ追い詰められた信長(高橋幸治)は、この状況ではおとなの証として前髪を切ってやる儀式はできないが、せめて元結だけはと蘭丸の髪を縛った元結を切ってやる。信長様の落ち着きぶりにはびっくりだが、ざんばら黒髪になった蘭丸の横顔の美しいことにも二度びっくり! 当時、十代だった片岡孝夫はその後、歌舞伎の大名跡・片岡仁左衛門を襲名、2015年には人間国宝になっている。
その後も多くの若手俳優が蘭丸を演じてきた。1973年の大河ドラマ『国盗り物語』で豪快な高橋英樹信長を支えたのは、山口百恵の『赤いシリーズ』などドラマで大活躍した中島久之の蘭丸だった。他の大河ドラマでは『徳川家康』に役所広司×土家歩、『信長 KING OF ZIPANGU』には緒形直人×石野太呂宇(竜小太郎)の信長×蘭丸が登場。2000年以降では、『功名が辻』舘ひろし×渡辺大、『江~姫たちの戦国』豊川悦司×瀬戸康史の顔合わせもあった。そこで気がつくのは、森蘭丸が信長の名セリフを引き出す役割を果たしていることだ。
それがよくわかるのは、1996年の大河ドラマ『秀吉』。本能寺で不穏な動きで目を覚ました信長(渡哲也)に森蘭丸(松岡昌宏)が叫ぶ。「敵は惟任日向守(光秀)!!」。にわかには信じなかった信長だが、やがて納得したのか、「日向守がなにゆえに謀反を」と言う蘭丸に「是非に及ばず」と一言返すのである。出ました、名セリフ。「是非に及ばず」は、信長の言葉として、高橋英樹も豊川悦司もしっかり言っている。
なお、松岡は2006年、テレビ朝日『信長の棺』で信長役だった。映画『清須会議』で森蘭丸、『麒麟がくる』で信長を演じる染谷将太とともに戦国の美少年と強烈武将ふたりを演じた俳優ということになる。