新型コロナの感染拡大が続くなか、いまや東京五輪の行方は世界の一大関心事だ。開催か、それとも中止か──その決定には宮内庁も大きな関心を寄せているという。宮内庁担当記者が言う。
「東京五輪・パラリンピック両大会の名誉総裁である天皇陛下は、7月23日の五輪開会式で開会宣言をされると見られている。平時であれば、世界に新たな天皇をお披露目する絶好の機会です。
しかし、コロナ禍で国民からも世界からも東京開催に反対論が巻き起こっている。そんななかで天皇陛下が東京五輪の“象徴”となることに宮内庁内で懸念の声があがっているのです」
最新の世論調査(NNHK・1月13日発表)では「中止すべき」が38%、「さらに延期すべき」が39%。約80%が反対となった。ヨーロッパなど海外メディアの論調も「中止やむなし」が大勢を占めている。強行開催となれば国内外から批判の声があがるのは必至だ。
「天皇陛下の名誉総裁就任は2019年7月、大会組織委員会会長の森喜朗・元首相が安倍晋三・前首相と話し合った結果、政府から宮内庁に要請されたものでした」(同前)
森会長は「私たちはコロナがどういう形であろうと必ずやる」と頑なに五輪開催を主張している。さらに「一番大きな問題は世論とコロナだ」と発言して海外メディアからも「日本の人々に対する顔面への平手打ち」(仏AFP通信)と大ブーイングを浴びた。
「名誉総裁就任から随分時間が経っています。五輪開催への逆風を打開するため、森会長や菅(義偉)首相が天皇陛下に開会宣言を改めて上奏する可能性は十分あるでしょう」(同前)
世論を味方に付けるため、天皇が“政治利用”されるのではないかという指摘だ。別の宮内庁担当記者が言う。
「もちろん天皇陛下は五輪の重要性も理解されているし、大会にかけるアスリートの気持ちも大切にされています。しかし、コロナ禍で国民が苦しんでいることも非常に心配しておられる。国民の多くが望まない五輪開催について、複雑な胸中でいらっしゃるのではないでしょうか。
特殊な状況で開会宣言を改めて要請することは、陛下のご心痛の種になりかねない。そのことを心配する宮内庁関係者は多いのです」
天皇が五輪強行開催に突き進む放言王・森氏の“切り札”にされてはたまらない。
※週刊ポスト2021年2月19日号