バイデン時代のキャピトル・ヒル(米議会の通称)で最も目立っているのは、金髪熟女のマジョリー・テイラー・グリーン下院議員(46)だ。南部ジョージア州第14区選出の新人議員だが、選挙前からSNSを通じて過激な人種差別発言やリベラル攻撃を流し続けた「陰謀論者」として日本でもたびたび報道されている。
同選挙区はテネシー、アラバマ両州に隣接した同州北西部。これといった産業はなく、テネシー州チャタヌーガ経済圏に入っている。人口の85%は白人、高卒79%、ブルーカラー57%。古いアメリカが今に残る「共和党の金城湯池」だ。
グリーン氏はジョージア大学卒業後、父親の建設会社経営を引き継ぎ、地元では著名なビジネス・ウーマンとして知られていた。政治経験はゼロだが、リベラル派を糾弾するアジテイターぶりはプロの政治家も舌を巻くほど。
「土地柄もあって、グリーン氏は人種差別、白人優先主義者で反共、銃規制反対。黒人、ラティーノ、アジア人への偏見が強い。東部エリートを徹底的に嫌っており、ユダヤ系億万長者であるジョージ・ソロス氏を『隠れナチスだ』と目の敵にしてきた」(地元紙政治記者)
政界入りを狙っているという噂を聞きつけた極右陰謀論団体「Qアノン」が彼女に接近して「公認」し、物心両面から支援してキャピトル・ヒルに送り込んだ。トランプ前大統領が「共和党の希望の星」と持ち上げたことも追い風になった。ただし、地元でも都市部に住む共和党支持者にはQアノンに対する拒否感の強い主婦層も多い。グリーン氏はそのあたりの嗅覚も敏感で、選挙戦が本格化してからは「Qアノン支持」を表に出さない戦略に切り替えていた。それが本選挙での圧勝(得票率75%)につながった。
「ホワイト・リリー」(白人だけの社会)で純粋培養されたグリーン氏は、意気揚々と都入りしたが、彼女を待ち受けていたのは、その差別主義に猛反発する主要メディアとホワイトハウス、そして上下両院を制した民主党だった。特に下院のナンシー・ペロシ議長は、グリーン氏のこれまでの発言を問題視し、「反民主主義的であり、議員としての品格に欠ける」と議員資格の剥奪すらほのめかした。
「グリーン氏は、かつてペロシ氏ら民主党重鎮の殺害を支持するメッセージをネット上に流していた。ペロシ氏はそれを根に持っていたらしい」(CNN議会担当記者)
結局、下院は2月4日、グリーン氏を所属委員会(予算委員会と教育労働委員会)から除名する決議案を賛成230、反対199で可決した。共和党からは11人が賛成票を投じた。当のグリーン氏は、採決前までは過去の発言を悔いる殊勝なそぶりを見せていたが、除名後はQアノンに先祖返りした。黒のジャケット、グレーのスラックス姿で記者会見に現れたグリーン氏は開口一番、「前進するのみ。これからは(委員会活動などせず)自由時間がたくさん増えるから全米各地を回って皆さんに直接お話ができるということね」と吠えた。