トランプ氏の弾劾裁判は、冒頭から民主党と共和党が激しく対立しているが、“被告人”であるトランプ氏自身はフロリダの別荘でテレビ観戦し、無罪評決が下ることも九分九厘決まっている。では、この裁判の「意味」とは何なのか。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏が分析する。
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トランプ大統領の自身2回目となる弾劾裁判が始まった。裁判とはいっても上院で議員が陪審員となって行うのだから政治的な裁判である。現在の上院勢力図は民主党50人、共和党50人だから、二大政党が対立するテーマでは基本的には議決は引き分けになる。過半数で決まる法案などなら、議長であるハリス副大統領が最後の1票を投じる権利があるので、事実上、民主党が51対50で有利だが、弾劾裁判で有罪判決を下すには3分の2の票が必要になるので、67票なければ有罪とはならない。つまり、共和党から17人の“造反者”が出なければ、トランプ氏が有罪になることはない。
トランプ弁護団は、まずこの裁判が憲法違反だと主張した。弾劾裁判とは現職の大統領を訴追するためのものだから、すでに大統領を退任して「一般市民」になったトランプ氏を裁くのは憲法の規定に反するというのである。それに対して検察官役を務める民主党のラスキン下院議員は、「弾劾の権利は、むしろ政権の最後の期間にこそ必要になる」と主張し、
裁判冒頭で上院は、この裁判が憲法違反かどうか評決した。その結果、56人が憲法違反にはならないとしたことで、今後も裁判は続くことになったのだが、ここでの共和党の造反はわずか6人。そもそも裁判自体が憲法違反だという立場を表明した共和党議員44人が有罪評決を下す可能性はほとんどないから、すでにトランプ氏の「無罪」は確定的だと言ってもいい。その意味では不毛で虚しい裁判である。
当然、トランプ氏は余裕しゃくしゃくだ。自らは裁判で証言しないと表明して完全無視を決め込み、ロンドン・タイムズの報道によれば、フロリダの別荘で休暇を楽しみ、ゴルフに興じて、親しい友人たちと豪華な食事を囲んでくつろいでいるという。
それ以上にトランプ氏にとって笑いが止まらないのは、大半の共和党議員が、今もトランプ氏への支持を明確にしたことだろう(50人のうち44人が恭順の意を示したのだから、党内の支持率は88%に及んでいる!)。トランプレスの共和党はリーダーレスだということを、今回の裁判は明らかにしたと言える。少なくとも当面の間、トランプ氏は共和党の唯一のリーダーとして君臨できることがわかったのだから、おそらく本人にとって忌々しい裁判ではあるものの、その場面をテレビで見てニヤリと笑っていることも想像に難くない。