最先端だと思っていた文化が、知らぬまに“時代遅れ”になっていた。年を取るごとに、こうしたことはたびたび起こるだろう。かつてのパンケーキやタピオカブームに象徴されるように、トレンドはコロコロと入れ替わっていく。それはスイーツに限らず、音楽シーンについても言えることだ。
関西の大学で教鞭をとるAさん(40代)は、先日、学生から発された一言によって自分が時代に取り残されていたことを実感したという。
「この間、ゼミの学生に向けて『ロキノン系の音楽を若者がよく聴いている』という主旨の発言をしたんですね。そしたら、ある男子学生から『先生、ロキノン系って死語ですよ。もうだれも使っていません。そもそも流行っていません』と一刀両断され、衝撃を受けました(笑い)。自分のなかでは、まだあの“四つ打ち系バンド”が流行っているという認識だったので」(Aさん)
学生に“死語”だと一蹴された「ロキノン系」とは、音楽雑誌『ROCKIN’ON JAPAN』に取り上げられてきたアーティストや、『ROCKIN’ON JAPAN』フェスに登場するバンドなどを指す。さかのぼれば、1990年代の『エレファントカシマシ』、『くるり』、『ナンバーガール』、『ゆらゆら帝国』、『BLANCKEY JET CITY』なども含まれるが、「おそらくこの学生が言った『ロキノン系』とは2000年代後半から2010年代の頭に流行した、いわゆる『邦ロック』(日本のロックバンド)のことではないでしょうか」と分析するのは、邦ロックに詳しいネットライター・Bさんだ。
「たとえば有名どころだと、2000年代には『ELLEGARDEN』、『フジファブリック』、『9mm Parabellum Bullet』、『Syrup 16g』、『チャットモンチー』、『THE BACK HORN』などがロキノン系と呼ばれていた。2010年代になると『赤い公園』、『フレデリック』、『[Alexandros]』、『KANA-BOON』、『KEYTALK』、『キュウソネコカミ』、『BLUE ENCOUNT』などが、高校生などを中心にブームになりました。このほか『BUMP OF CHICKEN』や『ASIAN KUNG-FU GENERATION』などもそうですね。
もちろん、バンドごとに音楽性もスキルも、まったく違います。しかし、ストリーミング配信などが普及する以前、TSUTAYAなどのCDレンタルショップでは『邦楽ロック』というコーナーが設けられていた。そういった棚にこれらのバンドが収められていたため、ロキノン系と一括りにされやすかったのかもしれません」(Bさん)