2人の刑事が活躍する「バディもの」ドラマといえば、現代なら『相棒』を思い浮かべるファンが多いだろう。2000年にテレビドラマが始まって、すでにシーズン19まで制作され、劇場版映画も人気を博した。そんな「バディもの」の草分けとして往年のファンには懐かしい名作が『噂の刑事トミーとマツ』ではないだろうか。
1979年に第1シリーズが始まり、人気に後押しされて1年半、66話まで続いた。さらに1981年には第2シリーズが1年間放映され、トータル106話に及んだ大作だ。トミー役には当時、若手俳優としてアイドル的な人気を誇った国広富之、そしてマツ役に抜擢されたのが、1977年の『愛のメモリー』で歌手としてスターダムに上った松崎しげるだった。
それまでの刑事ドラマといえば、『太陽にほえろ!』に代表されるシリアスな群像劇が主流で、見せ場といえば刑事の殉職シーンや犯人を改心させる心理描写などだった。それに対してトミーとマツは、2人のコミカルな掛け合いを中心とした明るい作風が特徴で、新しい刑事ドラマの定番を築いた作品だった。『週刊ポスト』(2月8日発売号)では、ドラマ史に残る名コンビに焦点を当てて、「最強のバディ」を探る特集を掲載しているが、同特集でも取材に応じた松崎の「マツの思い出」を詳しく聞いた。
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あれは歌手としてノリにノッてた頃で、オファーを受けた時は『噂の刑事』というタイトルだった。だけど、国広君は普段からトミーと呼ばれていて、自分もマツと呼ばれていたから、それをタイトルに入れたら面白いんじゃない、と提案したらそうなったんですよ。僕は歌い手でドラマ経験は少なかったから、逆に自由にそういうことを言えたんでしょうね。
それまでの刑事ドラマといえばシリアスなものが多かったけど、トミーとマツはアメリカン・テイストのコメディタッチな作品だった。日本では初めての試みだったと思います。まあ、僕にはシリアスなものはできないと思われていたということでしょう(笑)。
国広君とはそれまで面識がなかったんだけど、第一印象は「紅顔の美少年」だなあ、と。ところがはっきり物を言うタイプでね、いきなり「松崎さん芝居できるんですか?」と言ってくる。失礼な野郎だなあ、と思いましたよ(笑)。だから、実は1話、2話くらいまでは互いに腹にイチモツあって、演技がぎこちない。がっちり噛み合ってコンビになれたのは、その後ですね。