ライフ

認知症の発症リスクを高める難聴の治療に「人工内耳」を活用

「人工内耳」は“聞こえ”の悪さをどう改善する?(イラスト/いかわ やすとし)

「人工内耳」は“聞こえ”をどう改善する?(イラスト/いかわ やすとし)

 年齢以外に特別な原因がない難聴は加齢性難聴といわれ、60代後半で3人に1人との報告もある。海外の研究で認知症発症における9つの要因が挙げられた。中でも中年期(45~65歳)の難聴が大きなリスクとして報告されている。難聴の根本治療はないが“聞こえ”を改善する様々な補聴器が開発。その補聴器でも、聞こえが改善しない場合には人工内耳などの選択肢がある。

 *
 耳から入った音は鼓膜を振動させ、中耳を通り、耳の奥にある内耳の蝸牛に届く。蝸牛の中にある有毛細胞が音の振動をキャッチし、電気信号に変え、その電気信号が脳の聴覚野に伝わり、音として認識される。これが音を聞き取る仕組みだ。

 加齢性難聴とは加齢により、蝸牛の有毛細胞が減少、脳に伝わる電気信号が弱くなるため、脳が音を認識しなくなる病気のこと。加齢以外に原因はなく、自然に“聞こえ”の悪さを引き起こす。

 日本医科大学耳鼻咽喉科学教室の松延毅准教授に聞いた。

「加齢性難聴は単に聞こえが悪くなるだけでなく、認知症発症のリスクが高まることが指摘されています。2017年、『ランセット』という有力な科学雑誌の中で、認知症発症の9つの危険因子の一つに、中年期(45~65歳)の難聴が挙げられました。

 歳だから耳が遠くなるのは当たり前だと放置していると、周囲とのコミュニケーションが減っていきます。その結果、脳への刺激が減少し、音を認識する聴覚野の働きも低下、結局は認知症発症のリスクが高まる、と考えられています」

 ランセット国際委員会指定の認知症のリスクは教育、中年期の難聴、高血圧、肥満、喫煙、うつ病、社会的孤立、運動不足、糖尿病の9項目だ。これらのリスクを改善することで、発症を約35%予防する効果が期待できるという。

 日本でも厚生労働省の新オレンジプランで、認知症予防における聴覚の改善の必要性を指摘している。

 現在、加齢性難聴の確実な予防法や根本治療はない。音や言葉が聞き取りにくくなった場合は聞こえの能力を元に戻すのではなく、補助をする補聴器が用いられる。視力回復のメガネは、かけた瞬間から視力矯正が可能だが、補聴器の場合、言葉がはっきり聞き取れるようになるまでは認定補聴器技能者、言語聴覚士によるリハビリと機器のフィッティングが必要となる。

関連記事

トピックス

大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
石川県の被災地で「沈金」をご体験された佳子さま(2025年4月、石川県・輪島市。撮影/JMPA)
《インナーの胸元にはフリルで”甘さ”も》佳子さま、色味を抑えたシックなパンツスーツで石川県の被災地で「沈金」をご体験 
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
隣の新入生とお話しされる場面も(時事通信フォト)
《悠仁さま入学の直前》筑波大学長が日本とブラジルの友好増進を図る宮中晩餐会に招待されていた 「秋篠宮夫妻との会話はあったのか?」の問いに大学側が否定した事情
週刊ポスト
新調した桜色のスーツをお召しになる雅子さま(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
雅子さま、万博開会式に桜色のスーツでご出席 硫黄島日帰り訪問直後の超過密日程でもにこやかな表情、お召し物はこの日に合わせて新調 
女性セブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
週刊ポスト