新型コロナウイルスは美容業界にも大きな打撃を与えた。創業43年を迎えるエステティックサロン「たかの友梨ビューティクリニック」も例外ではない。前回の緊急事態宣言時には休業を、現在は時短営業を余儀なくされている──。美のカリスマでもある会長・たかの友梨さん(73才)は、このコロナ禍をどのように考えているのだろうか。その胸中に迫った。
* * *
私は50年以上、美容業界に携わってきましたが、これまでにいろいろな経験をしました。
16才のとき、群馬県の理容店に住み込みで働き、定時制の高校に通いながら仕事と勉強を両立させてきました。学校から戻ると、技術習得のための練習。眠い目をこすりながら、日々、技術を磨いていましたが、人の2倍3倍努力をすれば、必ず前に進んでいけることを実感しました。
理容師になって4年、20才で上京し、都内の理髪店で働くようになりました。そこで「これからは男性も美容室で髪を切る時代になる」と実感し、通信教育で勉強し、理容師、美容師の国家資格をとりました。
振り返れば、私はなんでも思い立ったらすぐに行動に移すタイプでした。当時、新聞で「パリでエステが流行している」という記事を見れば「これだ!」と思い、単身フランスへエステ修業へ。1972年のことでした。
本場フランスで8か月間、エステを基礎から学び、帰国後に会社を立ち上げ。そのときに考案した美顔器を発売したところ、これがヒット。そのタイミングで知人女性が、「あなた、美容師の資格があって、フランスでエステも学んできたんだから、美顔器を売るだけじゃなく、エステサロンを開いたら?」と背中を押してくれて、資金も都合してくださったんです。幸運なことに、ほかにも支援してくれるというかたがいらっしゃって、私はそのとき、「お金を借りたと同時に、私を応援してくださるかたがたの勢いをお借りしたんだ」と人のありがたみを感じました。
とはいえ、40年を超す歩みですから、すべてが順風満帆ではありません。2008年のリーマン・ショック時は世界的不況による打撃を受けました。
そうしたことが収まったと思ったら、新型コロナウイルスが来たのです。社会全体に自粛ムードが漂い、経済活動も縮小していく中で、どう対応すべきかを考えました。
新型コロナウイルスは私だけに来たわけではないし、この業界だけに来たわけではない。日本だけでもないし、世界中に等しく脅威が来ている──そう思うと、ひとりで重荷を背負い込むわけではない、と気持ちが少しだけ楽になりました。