新型コロナウイルスの感染対策のため、自粛を推奨される業態や職種は、そのときどきによって移ろってきた。パチンコ、ライブハウス、劇場など、人々が気にする先は移動したものの、一貫して疑いの目を持たれてきたのは「接待を伴う飲食店」だろう。それでも、対策方法が浸透してきたことなどから悪い意味での注目の的からはずれたように思われていた。だが、与党議員のうかつな言動によって、再び、業態そのものが危機に直面させられている。ライターの森鷹久氏が、夜の銀座から次々と火が消えようとしている様子をレポートする。
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与党議員たちが、緊急事態宣言下にも関わらず連日の東京・銀座クラブ通いをしていたことが発覚した。さらに「はしご」までしたとして謝罪、当の本人は離党し、党トップの菅総理までが頭を下げるという前代未聞の事態が起きた。
国民には不要不急の外出をせぬよう言っておきながら、政治家は好き放題か──。責任感皆無の政治家たちに、コロナの影響で疲弊しきった国民からは、もはや怒りよりも呆れの声しか聞こえてこない。だが、この騒動で「とどめ」を刺されたのは、政治家ではなく実は「銀座のクラブ」関係者だ。
今回の騒動が起きたことで「銀座のクラブはまだやっているのか」との批判も相次いだ。実際、銀座の「クラブ」や「スナック」、そして「ラウンジ」と呼ばれるような店のほとんどが、緊急事態宣言に入り休業状態にあるが、飲食店に求められているのは夜8時以降の営業自粛であり、いわゆる夜の店は「時短営業」などできるはずもなく、今回一部の店が表向きには営業していない形を装って営業、いわゆる「闇営業」を行っていたことが明らかになった格好だ。銀座のクラブ店経営・山谷ゆみさん(仮名・50代)は、声を震わせる。
「クラブなんていらない、下衆な商売だと身近な人からも言われる始末。仲間の店はどんどん閉店しましたが、お金も借りられるだけ借りて、やっと感染者が減ってきて、緊急事態宣言さえ解除されればなんとかなるかもしれないと、一縷の望みに期待していたのですが。お店の女の子達には、別の仕事で食べて欲しいと話しています」(山谷さん)
日本で感染が広がり始めた昨年3月ごろ、「諸悪の根源」とばかりに方々から叩かれた場所のひとつが、接待を伴う飲食店、客の隣に座って密な状態で接待する場所として知られる「銀座のクラブ」だった。大手紙社会部記者が振り返る。
「志村けんさんがコロナで亡くなり、クラブに行っていたことが(感染の)原因ではないかなど、様々な噂が流れていたのとほぼ同時期、厚生労働省のクラスター対策班が銀座や六本木のクラブで『クラスター』が発生した可能性が高いと見ているとわかり、各社が報じました。銀座のクラブといえば金持ちの中高年がいく場所、というイメージも手伝ってか、店も客もなんて非常識なんだと、市民やマスコミから非難されました」(大手紙社会部記者)