森喜朗氏の「女性蔑視発言」を徹底的に叩いた大新聞だが、なぜか東京五輪中止論には及び腰だ。
5年前の2016年1月、朝日新聞、日本経済新聞、毎日新聞、読売新聞の全国紙4紙は東京五輪組織委と「オフィシャルパートナー」契約を結んでおり、東京五輪の「スポンサー」になっている。
4紙が結んだ契約は3段階に分けられた国内スポンサーの上から2番目のランク(ティア2)にあたり、新聞4社で計50億~60億円を分担して出資したと報じられた。その後、産経新聞と北海道新聞もその下(ティア3)の「オフィシャルサポーター」となった。
新聞社が五輪の公式スポンサーになったことはなく、今回が初めてのこと。これまでは「公正な報道」の観点から避けられてきた。
過去の五輪では「1業種1スポンサー」が基本原則だったが、今大会でその枠は撤廃された。組織委は前述の新聞6社のほか、各業界で複数企業とスポンサー契約をした結果、史上最高額となるスポンサー料3720億円を集めた。
元JOC(日本オリンピック委員会)参事でスポーツコンサルタントの春日良一氏が言う。
「1業種1スポンサーの基本原則は『五輪は商業主義に侵されてはならない』という理念を前提とし、五輪マーケティングのモラルでもありました。それを崩した組織委のやり方は、五輪の理念をおざなりにして商業的成功のみを目指したと言われても仕方がない」
協賛に至るまでの交渉時には、「東京新聞」も組織委とスポンサー契約の交渉をしていたと報じられたが、締結には至っていない。当時は新国立競技場建設問題などで批判的な論調だった同紙を「森会長が排除した」などと報じられた。
その東京新聞の論調は他紙とは異なる。社説(1月25日)でこう主張している。
〈政府や東京都、大会組織委員会は開催の可否を根本的に問い直すべきだ〉
〈遅まきながら、感染状況に応じた縮小案や中止案について検討し、準備状況や影響予測なども含めて公表する。その上で、どの案を選ぶか丁寧に説明するべきだ〉