日本は、猛威を振るう新型コロナウイルスの対応に失敗した国だと言わざるを得ない。医療面では、人口あたりの病床数が先進国でも飛び抜けて多いにもかかわらず、重症患者やハイリスクの高齢者が病床不足で入院できない医療崩壊を招いた。
さらに菅政権は、感染対策において大きな失敗をする。それは「Go Toキャンペーン」だ。
推進したのは、全国旅行業協会会長で“観光業界のドン”である二階俊博・幹事長が最高顧問を務める「自民党観光立国調査会」だ。
会長は二階氏の“右腕”と呼ばれる林幹雄・自民党幹事長代理、事務局長は福井照・元沖縄北方相、事務局次長は二階側近の門博文・代議士と二階派議員が幹部に並ぶ。
菅氏と二階氏は感染第2波が始まっていた昨年7月にGo Toトラベルを見切り発車すると、9月の総裁選で二階氏は菅氏を強力に支援して総理の座につけ、Go Toで旅行者が増えていた10月に二階派は盛大な政治資金パーティーを開催した。就任したばかりの菅首相が「二階会長をはじめ、皆さまに大変世話になった」と挨拶している。
Go Toトラベルは緊急事態宣言で停止期間が延長されたが、同調査会の面々は再開に動いている。菅首相が緊急事態宣言を発出した今年1月7日、二階氏や林氏ら同調査会幹部と官公庁、旅行業界幹部が自民党本部に集まり、宣言の解除後に早期にGo Toトラベルを再開するよう求める提言を決定。政府は第3次補正予算でGo Toに約1兆円の予算を追加した。
二階氏が政治力によって菅首相を動かし、感染収束する前にGo Toトラベルを再開させれば、昨年の二の舞になりかねない。経済ジャーナリスト・荻原博子氏が語る。
「Go Toは本来、コロナ後の政策です。菅さんは感染防止と経済の両立というが、二階さんに総理にしてもらったから貸し借りで再開するというのは経済対策でもなんでもありません」
※週刊ポスト2021年2月26日・3月5日号