コロナ禍で社会全体に停滞感や閉塞感が漂っている日本。もし、昭和を代表する名経営者の松下幸之助氏が生きていたら、このコロナ禍をどう乗り切っただろうか──。元PHP総合研究所社長の江口克彦氏が、松下氏の功績を振り返り、現状を打破するヒントを提言する。
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23年間、側近として見てきましたが、松下幸之助という人間は家族よりも社員、社員より国民、日本を大切に考える人でした。もし会社が潰れても日本は守るという意識を持っていました。
ですから、もし今、松下がパナソニックの経営者だったら、日本を救うためにあらゆる方策を取ったはずです。
例えばワクチン。ワクチンの開発はパナソニックにできませんが、先端医療技術の提供はできます。パナソニックが開発資金を投じ、製薬メーカーと組んでワクチン開発を支援する。
「人間が大事」というのが松下の基本的な考えですから、メイドインジャパンにこだわらず、国境を越えて、最もスピーディーかつ効率的に国民や全世界の人たちに提供できる形でワクチン開発をサポートしていたでしょう。
パナソニックが自社で行なえるのは、ワクチンを保管するためのマイナス70℃の冷凍庫の提供です。ワクチンを運ぶときに使うものだけでなく、近所のかかりつけ医で接種できるようにするなら、各診療所にマイナス70℃で保管できる冷凍庫がなければいけない。
大量の冷凍庫をパナソニックが無償もしくは格安で提供することなどを、率先してやっていたはずです。
政府の対応にも意見していたかもしれません。例えばコロナ国債100兆円の発行を進言し、国民の生活を守り、安心感を与えるための財政資金を調達する。それと並行して、徹底的な政府コストの削減を行なうことも求めただろうと思います。これを機にコスト削減を徹底すべきだと政府に進言したでしょう。