今や手放せないアイテムとなったスマホだが、恐ろしいのはスマホ依存。世界13か国で翻訳され大ベストセラーとなっている、スウェーデン出身の精神科医・アンデシュ・ハンセン氏の著書『スマホ脳』(新潮新書)によれば、我々は1日に2600回以上スマホを触り、平均して10分に1度、スマホを手にとっているという。
危険なのは「スマホ依存」の状態が続くと記憶力に支障が生じる可能性があることだ。実際、スマホの長時間使用に伴う認知症のような状態に悩まされる人は増えている。認知症の専門医で「もの忘れ外来」を開設する奥村歩さんが解説する。
「ここ10年、来院する人の年齢層は大きく引き下がっています。特にいまは30〜50代の働き盛りの世代が多く、『もの忘れがひどくなり、家事や仕事に支障をきたしている』と悩んでいます。彼らに共通していたのはスマホやパソコンなどのIT機器を長時間使っていること。診察の結果、認知症ではなく過剰な情報を脳の司令塔の役割を果たす『前頭前野』で処理しきれず、脳疲労を起こしたことが原因だとわかりました」
奥村さんが脳機能検査などで調べた結果、前頭前野がフリーズした状態にある患者も多いことがわかった。
「特に脳疲労を加速させているのが、電車の中や歩いているときに目的もなくネットサーフィンをする“ながらスマホ”です。一日のうち一定の時間、脳がぼんやりした状態にあることは大変重要で、脳はこの時間で情報を整理し、記憶を定着させています。よって、その時間が充分に取れなくなると、記憶する力は一気に低下してしまうのです」(奥村さん)
記憶力とともに集中力が失われることも懸念される。実際、米テキサス大学の心理学者エイドリアン・ウォード氏が800人を対象に行った実験によれば、スマホを机の上またはポケットに入れたまま課題を行ったグループと、別の部屋に置くように指示されたグループを比較したところ、前者の成績が著しく低く、とくにスマホを机の上に置いていたグループの成績は最低だったという。
いかにスマホが、そこに存在するだけで集中力を削ぐかがわかるだろう。
※女性セブン2021年3月4日号