吉沢亮が渋沢栄一を演じ、話題を集めているNHK大河ドラマ『青天を衝け』。北大路欣也(77才)演じる徳川家康が冒頭、物語を“解説”する役割を担っている。一風変わった解説者ぶりにSNSでも話題を集めているが、こうしたユニーク解説者は今回が初めてではなかった。時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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大河ドラマ『青天を衝け』、第一話の冒頭、突如、北大路欣也の徳川家康が出てきてカメラ目線で「こんばんは、徳川家康です」と挨拶したのには、たまげた。こんばんはって。大御所様ったら。しかも、第二話でも「鎖国してたね、なんて言われますが」と地図など広げながら、一人芝居のような熱演でまたビックリ。
家康登場には、ドラマの主人公である渋沢栄一が、東照大権現様(家康)の教えを大事にしていたこと、ややこしい幕末の情勢を家康の解説により、わかりやすく伝えようという意図があるらしい。確かに「勤皇」「佐幕」「攘夷」など、さまざまな志や主張を持つ人物や藩が入り乱れて、幕末ものはわかりにくいとも言われる。諸外国の事情もからんでくるし、解説があるのはありがたい。
実はこれまでにも大河ドラマには、ユニークな「解説者」が登場している。中には言いたい放題の解説者もいて、毎回驚かされた。
1995年の大河『八代将軍吉宗』の近松門左衛門(江守徹)。劇作家の近松は、五代将軍綱吉(津川雅彦)の時代は元禄文化全盛で活躍できたが、質素倹約路線の吉宗(西田敏行)が将軍になると、途端に締め付けが厳しくなって文句たらたら。そこでドラマとはまったく別の部屋にいる近松は、「頭の固いお役人に、一泡吹かせようと…」出てきたのである。
江守といえば、大河ドラマ『元禄太平記』で堂々たる大石内蔵助を演じた名優である。活舌抜群、押しの強さも人一倍。経済問題に苦慮した吉宗の事情について、「さて、この年は豊作なれど、皮肉にも米が余り、値がどんどん下がり申した。いわゆる豊作貧乏でござる」と声を出し、時にパネルは出すわ、表を持ち出すわ。名解説を繰り広げた。
2000年には『葵 徳川三代』の解説に水戸光圀(中村梅雀)が登場。ドラマで自分の祖父にあたる徳川家康(津川雅彦)が、天下取りの仕上げに鼻をふくらませて奮闘する最中、光圀は、真っ赤な着物に渦巻き柄の羽織など、派手ないでたちでドラマと関係なくお陽気に出てくる。「当時の諸大名の勢力を石高別に披瀝いたさん」と、壁のランキング表を見せ、「第四位は金沢84万石前田利長…」と示しながら、「そして、ぶっちぎりの第一位は、もうおわかりですな。ジャッジャジャジャーン!! 江戸260万石徳川家康公にござります」とニカーっと笑顔だ。