供給予定量が届かない、接種スケジュールが不確定など、問題が山積みな新型コロナワクチンだが、いずれは私たちも接種することになる。その前に、知っておかなければならないのは各メーカーのワクチンの性質だろう。安全性や危険性はこんなにも違う──。
世界を救う救世主として期待される新型コロナウイルスのワクチン。日本に先駆けて接種が始まった国では「異変」が起きている。ワクチンの選別である。ドイツ予防接種常設委員会は、英医薬品メーカー「アストラゼネカ」のワクチンについて、接種対象を65才未満に限定するよう政府に勧告した。同委員会は「高齢者に効果があるとするデータが足りない」と指摘する。
同様の勧告はフランスやスウェーデンでも行われ、ヨーロッパの約10か国がアストラゼネカ製を65才以上に接種することを避けている。メーカーの“本国”イギリスの国民は、アストラゼネカ製か、アメリカのファイザー社のワクチンを接種することになっている。ただし、自分がどちらを打つのかは選べない。そこである騒動が起きた。
「保健診療所で働くスタッフが、どちらのワクチンを扱うかの“インサイダー情報”を家族や友人にリーク。情報を知った人々が『アストラゼネカ製は嫌だ』として、予防接種の予約をキャンセルする事態が発生しました。
なかにはファイザー製を接種するために複数の病院で接種の予約をして、リーク情報をもとに接種場所を決める人もいて、『ホスピタル・ホッピング(病院めぐり)』として話題になっています」(在英ジャーナリスト)
さらにイギリスでは、公共放送BBCの司会者が「アストラゼネカではなくファイザーを打っていいですか。なぜなら有効性がはるかに高いから」と発言して注目された。海外では、たんにいつワクチンを接種するかではなく「どこのワクチンを打つか」こそが関心の的なのだ。
一方、日本では2月17日より、ファイザー製ワクチンの医療従事者への先行接種がようやく始まった。懸念された健康への影響としては、20日午後5時までに摂取した約5000人のうち2人に、それぞれじんましんと寒気などの副反応と疑われる事例が確認された。5000分の2をどう考えるべきか。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが言う。
「コロナのワクチンは、インフルエンザなどのワクチンに比べて副反応の割合が10倍ほど高い傾向があります。ただし副反応があるということは、体内でワクチンが効果を発揮する際に欠かせない免疫反応が起きている可能性が高い。現時点でこのワクチンがよい、悪いとは簡単にいえません」