新型コロナは、欧米で感染拡大に減速傾向が出てきた。各国でワクチン接種が進んでおり、収束への期待が高まっている。そんな中、感染者数が世界2位、死亡者数も世界4位の“感染爆発国”インドが「感染封じ込めに成功した」との見解を出しているが、果たして本当なのだろうか──。ニッセイ基礎研究所主席研究員の篠原拓也氏が考察する。
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新型コロナはロックダウン(都市封鎖)や外出禁止などの厳しい措置の効果もあってか、欧米で感染拡大に歯止めがかかってきた。
加えて、昨年12月に始まったワクチン接種が、欧米や中東諸国などの多くの国で進んでいる。すでに多くの人が接種を受けたイギリスやイスラエルでは、新規感染者数が顕著に減少したと報じられており、感染の抑止が期待されている。
日本でも、2月17日からワクチン接種が始まった。効果が表れるのは、多くの人が接種を受ける春以降になりそうだが、ようやくコロナ禍収束に向けた希望の光が見えてきたといえるだろう。
そんな中で、インドでは1月下旬に政府から、「感染封じ込めに成功した」との見解が出された。インドはこれまでアメリカに次いで多い1100万人超の感染者数が出ており、死亡者数も世界4位の15.6万人超に上っている。
インド政府は、感染拡大を止めるために昨年春以来、国民に厳しい行動制限措置を課してきたが、新規感染者数の減少傾向を受けて、2月に措置を緩和している。このインドの感染動向をどう見たらよいか、少し考えてみたい。
ピーク時は1日あたり10万人弱の新規感染者
まず、インドの感染動向を簡単にみていこう。昨年1月30日に最初の感染者が報告され、最初の死亡者が出たのは3月中旬だった。
その後、新規感染者は春から夏にかけて徐々に増加した。夏になっても感染拡大は落ち着かず、9月中旬にはピークとなり、1日で9万7000人を超える新規感染者が出た。それ以降は徐々に新規感染者数は減少して、今年2月には1日あたり1万人前後の水準に落ち着いてきた。
1日あたり1万人というと、まだ感染規模は大きいように思われるかもしれない。しかし、インドは人口が13.5億人(2018年)と、日本の10倍以上であることを踏まえれば、感染はかなり落ち着いたといえるだろう。
死亡者数も、昨年春から夏に増加していった。9月中旬には、1日で1200人を超える死亡者が出てピークを迎えた。その後、徐々に減少して今年2月には1日100人前後にまで下がっており、日本とあまり変わらない水準となっている。
インドでは、欧米や日本などで見られた第2波、第3波といった感染の波は来ていない。9月中旬のピークを境に感染が減少傾向となり、その傾向が続いているという。