「史上最悪」と言われるまでに日韓関係をこじれさせた韓国・文在寅政権は任期満了まで1年余りとなった。支持率も低迷し、窮地に陥る文政権の迷走に、これからさらに拍車がかかることになりそうだ。
昨夏以降、長崎県西方の東シナ海では、韓国海洋警察の船が海洋調査中の海上保安庁の測量船に「警告」を出す事例が頻発している。2月11日には、韓国が不法占拠を続ける竹島に対する自衛隊の“侵攻”を想定した「反撃シナリオ」を韓国軍が策定していたことが報じられた。日本を引き合いに出して求心力を高めるというお決まりのやり口だと考えられる。
そうしたなか、突如浮上したのが「日韓海底トンネル」構想だ。これは、釜山と九州を海底トンネルで結び、鉄道などを走らせようというもの。総距離は200km以上に及び、世界最長の海底トンネル・青函トンネル4つ分に相当する壮大な計画である。
構想をぶち上げたのは保守系最大野党「国民の力」のトップ・金鍾仁氏らだ。5兆円を超える経済波及効果や、45万人規模の雇用創出効果などをアピールしたが、文政権を支える与党「共に民主党」は猛反発。同党の崔仁昊首席報道官は記者団に次のように発言した。
「日本の大陸進出の野心に高速道路を架けてやるようなものだ。何度考えても日本に有利な公約で、韓国の国益にかなうものではない」
日本では2010年頃から民間主導の日韓トンネル構想がたびたび浮上したが、その後、立ち消えになっている。今回は韓国国内で勝手に計画が持ち出されただけなのに、「日本を利するなんてけしからん」という議論を“日本不在”のなかでやっているのだ。
韓国情勢に詳しいジャーナリストの河鐘基氏が指摘する。
「この構想は4月に行なわれる釜山市長選の公約として野党側が出した地元への利益誘導策です。コスト感覚も現実味もない荒唐無稽な計画ですから、与党側も本来は公共事業として価値があるのかを冷静に批判すればいいのに、“日本を利する政策”だと親日バッシング(反日)の論法で反論を繰り返すだけ。そうしたほうが世論に訴える力が強いと判断しているからでしょう」
※週刊ポスト2021年3月12日号