臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、菅義偉首相の長男らによる総務省の接待問題について。
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“こういうことはどこの社会でも多かれ少なかれあること”と思うからこそ、総務省が公表した調査結果に「甘い」と感じた人は多いだろう。菅首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」から総務省幹部らが接待を受けていた問題で、総務省は2月24日、倫理規定違反で11人を処分。だが同省は、「(会食した相手が)利害関係者とは認識しておらず、正剛氏(菅首相の長男)の存在が会食に影響を及ぼしたかは確認できない」と発表したのだ。そんなことあるはずないと思うのだが、“永田町の常識は世間の非常識”と言われるだけに何が起こるかわからない。
例えば、答弁でよく政治家が使う「記憶はございません」という便利な言葉を、社内調査で言ってみようものなら、どんなことが起こるか想像するだけでも怖ろしい。だが、接待を受けた総務省の秋本芳徳・情報流通行政局長は、この言葉を17日の国会で連発。会食時、BSやCSなどの放送業に関する話が話題に上ったことについても、「事業に関して要望を受けた記憶もない」と答弁したのだから、よほど怖いモノ知らずなのだろう。
嘘はつきたくないが、自分の口から真実をつまびらかにはできないとなると、「記憶にない」、「覚えていない」といった言葉を常套句にするしかない。だが、下手に言い逃れし否定しようものなら、確実に仕留めようと二の矢、三の矢が次々と放たれるご時世である。霞が関の優秀な官僚たちは、本当にこれで逃げ切れると思ったのだろうか。
案の定、今回の接待問題を最初に報じた週刊文春が会食時の音声を公開すると、18日には秋本氏は「私の音声と思われる」と認めながらもやはり「記憶にない」とし、19日には「今となっては発言はあったのだろうというふうに受け止めています」と認めることとなった。