ネットにおける誹謗中傷が社会問題とされるようになってから時間は経っているが、依然、折に触れて棘は表出する。コラムニストのオバタカズユキ氏が考察した。
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新規感染者数が減ってきたとはいえ、まだまだ新型コロナウイルスに感染する可能性は誰にでもある。そして、いつどこでどのように感染したのか不明である場合がとても多い。だから、感染者に対してその責任を問うたり、批判をしたりといった行為はナンセンスで、あってはならない、との社会的コンセンサスがとっくに取れているはずである。
なのに、だ。2月24日の夕方から夜にかけて「木村英子参院議員がコロナ感染」というニュースが流れると、ネット上に大量の批判的書き込みが湧いてきた。誹謗中傷の声が飛び交ったのだ。
木村議員は、山本太郎代表が率いるれいわ新選組公認で、2019年7月の参議院議員選挙で比例区当選した人物。幼少期に事故で頸椎を損傷、脳性麻痺と診断された重度の身体障害者でもある。電動車椅子を操作する右手以外、体はほとんど動かず、政治活動も常に介護者と共に行っている。
そんな木村議員のコロナ感染の事実を最初に公にしたのは、彼女の公式ツイッターアカウントだった。24日の午後6時6分に、〈【ご報告】昨日、医療機関においてPCR検査の結果、木村英子が新型コロナウイルス陽性であることが判明しました。本日、保健当局からのヒアリング等を受け、感染経路は調査中です。現在、自宅にて療養中でございます。ご心配おかけいたします。(木村英子事務所)〉とツイートした。
このツイートに対しては、原稿執筆現在、816件のリプライ、330件の引用ツイートが寄せられている。そのほとんどは「お大事にしてください」など木村議員にお見舞いの言葉をかけるものや、入院せず自宅療養ではまずいのではないかと心配する声である。批判的な書き込みはひとつもない。直接、本人に石を投げるような者は見当たらない。
誹謗中傷はもっぱらヤフーニュースのコメント欄や、ニュースを見てそれに反応したツイートなどでなされていた。本人を前にもの申すわけではなく、もっとお手軽に安全地帯から発した脊髄反射的な批判ばかり。なので、いわゆる炎上というのとは少し違うのだが、それらの中身がなんともひどいのである。木村議員の支持者だったら、怒り心頭に発するところだ。具体的には、こんな誹謗中傷がなされていた。
〈まず厳しい意見ですが…… 国会に出てないよね? 辞職すべきでは? 出てないのに金貰うって人としてどーなんだ? それで日本は成り立つのか? 税金捨てるようなもんだろ この今苦しい人もいるなか コロナ怖いからって国会にも出席してなかったのにコロナ感染 そして仕事してないのに給料貰うって どーなんだ?生活保護だけで良いでしょ〉
〈昨年以降登院もせず歳費もらっても仕事できないのでは何のための国会議員なのか? 社会的弱者の代弁者は社会的弱者でないといけないことはなく行動力のある者がすべきで理想や綺麗事では世の中が回っていかない〉
〈国会議員としての責務を果たせないことが最初から分かっているのだから、少なくとも国政議員に対しては被選挙権があってよいのでしょうか。「戦災、災害などにあたって内閣総理大臣が招集を宣言した際には、ただちに国会に参集する義務を負う」国会議員が障害を理由に登院できません、では通用しません。災害時に真っ先に見捨てられるのは、歩けなくなった人です。差別の意図ではありませんが、辞職されるべきではありませんか?〉