新型コロナウイルスによる二度目の緊急事態宣言で、営業時間短縮の要請に応じた飲食店への協力金「1日あたり6万円支給」は、ネットでは「協力金バブル」などと揶揄された。このバブルに、悪い意味で踊らされ、人間関係にまで影響が出ている。ライターの森鷹久氏が、本格的なアフターコロナを前に、協力金によって金銭的には救われたはずなのに不安でたまらない飲食店主の胸のうちを聞いた。
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新型コロナウイルスの新規感染者手数は右肩下がり、2月からはワクチン接種も開始と、一年以上にも及ぶ「コロナ禍」にやっと収束の兆しが見えてきた。休日ともなれば観光地には人が溢れ、これを「緩み」だと指摘する声もあるものの、各国における株価の上昇も収束を見据えたものという見方が強く、世界中が「アフターコロナ」への期待に胸を膨らませていることは、間違いのないようにも思える。
しかし、本当に「元の生活」に戻れるのか。そんな不安を抱く人は少なくない。
「この一年、まともに商売ができた、という感じがしない。今でこそ、仕事や生活への不安はないが、それが逆に怖い。アフターコロナは生活様式もガラリと変わり、一年後に自分が何をしているか、想像すらできない」
千葉県北西部で居酒屋を営む横井和彦さん(仮名・40代)は、1月の中旬以降、全く仕事をしていない。コロナ感染が拡大し始めた昨年の3月下旬から客足は以前の半分以下に減った。一度目の緊急事態宣言では時短営業やランチ、弁当販売と県からの協力金でなんとか乗り切り、秋口には以前の7割程度に客足は戻ったものの、年末にかけ、再び激減。年が明けてすぐ2度目の緊急事態宣言となり、またもや時短営業を迫られた。
「二度目の時短営業は、1日あたり6万円のお金が出ますから、うちみたいな小さな店にとってはありがたいという他ない。通常は夕方4時から深夜2時までの営業で、売り上げは大体8万円くらいでしたからね」(横井さん)
居酒屋にとってのコアタイムは「夜8時以降」である。仕事を終えたサラリーマンが街に繰り出し酒を飲み始めるのが夕方6時から7時頃。酔いが回って二軒目、三軒目に選ばれるのが、横井さんの店のような小規模居酒屋。8時以降の営業で、売り上げの8割を占めていたという横井さんの店は、1月以降、空けていても「無駄」どころか「マイナス」になる計算だった。