2017年の就任以来、極めて強硬な反日政策を続けた韓国・文在寅政権は、ここにきて迷走している。日韓の大きな火種である徴用工問題で、2018年に大法院(最高裁)が日本製鉄(当時・新日鐵住金)に損害賠償を命じる判決を出したのに続き、今年1月8日にはソウル中央地裁が元慰安婦に対する損害賠償を日本政府に命じる判決を出した。
そうした国際法を無視した判決について、文政権は複雑な反応を見せた。1月18日の新年記者会見で、文大統領は徴用工問題について、「(日本企業の資産が)強制執行で現金化されるのは日韓関係にとって望ましくない」と発言し、元慰安婦に対して賠償すべきとする判決にも、「正直、困惑している」と述べた。
こうしたスタンスの変化の背景について、「世界的な外交情勢が大きく変わり、文政権の対日戦略が修正を迫られている」と指摘するのは、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏だ。
「文政権の最大の政治目標は南北融和です。米国大統領がパフォーマンスを重視するトランプ氏だった時は、米朝および南北首脳会談という“政治ショー”の開催にこぎつけたが、バイデン新大統領は日米韓の同盟関係を重視している。そのバイデン氏を北朝鮮との交渉の席につけるには、“韓国は日韓関係改善に動いている”と米国にアピールする必要があるわけです」
ただ、南北融和を掲げている間に足元の韓国経済が揺らいでいる。就任以来、文政権の公約である最低賃金の大幅な引き上げや、残業規制の強化で疲弊した企業をコロナが直撃し、1月の就業者は前年同月比で100万人減少。昨年は、1998年の通貨危機以来のマイナス成長となった。
相次ぐ失政で支持率は低迷を続け、すでに政権末期とも囁かれる。
※週刊ポスト2021年3月12日号