『小村雪岱展』を訪れた壇蜜「様々な妄想がかき立てられて…」
着物姿で現われた壇蜜は、雪岱の世界観に触発され…
「おせんが胸をはだけていても、全然いやらしさを感じさせません」(壇蜜)
小村雪岱(こむら・せったい)明治20年、埼玉県生まれ。東京美術学校(現・東京藝術大学)日本画科選科卒業。大正3年に泉鏡花『日本橋』で初の装幀を手がける。大正7年に資生堂意匠部へ入社し、5年の在社中に「資生堂書体」の基礎を築く。昭和8年、邦枝完二作『おせん』(朝日新聞)の挿絵を担当し、挿絵画家として不動の評価を得る。昭和15年、53歳で没(写真/埼玉県立近代美術館蔵)
《泉鏡花『日本橋』》 装幀:小村雪岱 冊子 22.2×15.2センチ。大正3(1914)年、千章館。清水三年坂美術館蔵。装幀担当として27歳の雪岱を泉鏡花が自ら抜擢し、この後より、鏡花本の多くを雪岱が手がけることになった
《おせん 縁側》 木版 高見澤木版社 26.0×37.0センチ。 昭和16(1941)年頃 清水三年坂美術館蔵。 夕刻、行水へ向かうおせんが庭先の虫の音に耳を傾ける姿。 「脱いだ着物が見えるのがまたいいですね」(壇蜜)
《こぼれ松葉》 絹本墨画 103.7×29.5センチ。 清水三年坂美術館蔵。 舞い落ちる松葉を見上げる姿から風を、女性の膝の高さに松葉が1本散っている様子から奥行きを感じさせる
《こぼれ松葉》の前に立つ壇蜜
《赤とんぼ》 絹本着色 25.5×17.7センチ。 昭和12(1937)年頃 清水三年坂美術館蔵。 暖簾からちょこんと顔を覗かせた若い女性。「おてんばな表情で、視線の先には赤とんぼが飛んでいます」(壇蜜)
《おせん 雨》 木版 高見澤木版社 26.0×40.0センチ。 昭和16(1941)年頃 清水三年坂美術館蔵。雪岱没後に弟子が監修した木版画。雑踏に隠れて言い寄る若旦那から逃げ出す、おせん(右下の黒頭巾)の姿
「一瞬で虜になりました」(山下)
左から《写生 ヤマユリ》、《見立漆器「鋏」》、《枯山百合》
《青柳》木版多色刷 アダチ版画研究所 40.8×26.5センチ。 昭和16(1941)年頃 個人蔵 。「お稽古の前なのか、後なのか。留守模様の風景画でありながら、風俗画とも呼べる雰囲気があります」(山下)
《吉川英治『遊戯菩薩』》 挿絵:小村雪岱 第16回 昭和10(1935)年9月15日『サンデー毎日』掲載 紙本墨画 15.7×23.3センチ。 清水三年坂美術館蔵。 雑誌連載小説の挿絵。美濃の郷士・小泉百介と彼を慕うお菜、 彼女に捨てられた和平を中心に展開する物語
《柳橋》 絹本着色 68.8×107.0センチ。 清水三年坂美術館蔵 。「雪岱の貴重な肉筆画で最大級。雨に煙った柳をシルエット状に 描き、繊細な春雨の表現もすばらしい」(山下)
《永井荷風『すみだ川』》 舞台装置原画:小村雪岱 昭和3(1928)年上演 本郷座 紙本着色 6.9×26.5センチ、6.5×26.5センチ、7.0×26.5センチ 。個人蔵。 「雪岱は舞台装置も多く手がけ、鉛筆で細かくアイディアが書き込まれた直筆の原画も残されています」(山下)
《月に美人》 絹本着色 20.5×23.0センチ。 清水三年坂美術館蔵。 橋の欄干にもたれて若い女性が三日月より細い月を見つめている団扇絵。うなじや後ろ姿に色香