ドラマといっても、1時間、2時間の枠だけではない。30分ものや、もっと短い放送時間のドラマが最近増えているのだ。どんなドラマがあるのか? そして、その特徴とは? コラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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今シーズンも「短めドラマ」が豊作だ。
『ここは今から倫理です。』(NHK)、『モコミ』『書けないッ!?』(テレビ朝日系)、『でっけぇ風呂場で待ってます』『FAKE MOTIONたったひとつの願い』(日本テレビ系)、『おじさまと猫』『サクセス荘3』『東京怪奇酒』『あなた犯人じゃありません』(テレビ東京系)、『ホリミヤ』(TBS系)、『シンデレラはオンライン中!』『30禁 それは30歳未満お断りの恋』(フジテレビ系)などなど30分枠に個性的な作品が揃った。
先日、BSプレミアムで放送された『だれかに話したくなる山本周五郎日替わりドラマ』の放送は19時。一話完結式(4と5話は前後編)五本の中の一本『泥棒と若殿』は、つらい境遇の二人が支え合う話。同時期に歌舞伎座で尾上松禄と坂東巳之助で一時間を超える芝居として上演されていて、舞台を見て大泣きした私は同じ内容がドラマで30分に?と驚きつつ見て、また泣いたのであった。
しかし、30分で驚いている場合ではないのである。昨年来より存在感を増しているのが、5分弱のミニドラマだ。
話題になった『きょうの猫村さん』(テレビ東京系)は、猫の猫村さんが、飼い主の坊ちゃんとの再会のため、お金をためようと家政婦となり、奮闘する物語。買い物かごをさげた猫村さんが松重豊で、その巨大ぶりにびっくりしたが、うれしいと寝転んでゴロゴロしたりする姿は、面白かった。
猫に続いて年末に出てきたのが、熊だ。『悲熊』(NHK)は、ジャニーズWESTの重岡大毅がもこもこの熊くんに。川でせっせと鮭を獲り、水産加工会社で働く熊くんは、ゴミを片付けていたら「熊がゴミあさり」と勘違いされて捕獲され、クリスマスのベルがクマ避けの鈴に聞こえてビビりまくり、なんでもない道でよく転ぶ。おまけに伝説の男・熊狩権三に始終、猟銃で狙われているのである。そんな熊くんの悲喜こもごもが10話で描かれた。
そして、ギャラクシー賞受賞などで注目されたのが、『光秀のスマホ』。戦国時代、武将たちがスマホを持っていたら…光秀はエゴサしては、自分の人気の低さにがっくり。そこに「今川義元さん桶狭間で討たれる」速報が。これからは織田の時代だという書き込みを見た光秀は、過去に信長に「うちは、朝倉家より楽しいよ~」と誘いのメッセージが来たのに断ったことを後悔。なんとか挽回できないか、スマホに聞いてみる…。画面の中心はスマホのみ。光秀スマホ中毒。斬新なドラマだった。
現在は、猫村さんの後に『ざんねんないきもの事典』が放送中。先日放送された第20話「ニワトリ」の回はいいアイデアを出したのに採用されず凹む新人社員(磯村優斗)に白髪キンキラ神様が「なんかさあ、ニワトリに似てるよね」と話しかける。ニワトリのざんねんぶりを聞いた新人が「俺はニワトリじゃない」と動き出すというストーリーだ。
ミニドラマに共通しているのは、キャストが豪華なこと。猫村さんの共演には濱田岳、小雪らが登場、『悲熊』にも北村有起哉、黒島結菜、『光秀のスマホ』の光秀役は山田孝之、『ざんねんないきもの』の神様は竹中直人。数々のドラマの主役を務めた面々が、ミニドラマでピリッと面白さを見せる。くすっと笑わせる。偶然見れば、ちょっとうれしい。録画、配信ならまとめて楽しい。気持ちが沈むことも多い今日この頃、贅沢なミニドラマが気分転換に役立っていることは、間違いない。