北朝鮮では新型コロナウイルスの感染拡大をうけて、昨年1月から中国との国境封鎖を継続しているが、その影響で物資不足に陥り、日常生活用品や食糧の値段が高騰している。その結果、市民らが当局の目を盗んで、廃坑になった金鉱山に忍び込み、金を違法に採掘していることが明らかになった。そのなかには、落盤事故で命を失うケースもあり、北朝鮮当局は、金鉱は国家の財産であり、廃坑であっても、金の採掘は国家財産の侵害であり、厳重な反党、反国家的な行いであると警告しているという。
しかし、北朝鮮は慢性的な経済不振だけに、市民のグループばかりでなく、一部の軍部隊も組織的に金鉱の盗掘を行い、中国のブローカーに流しているとの情報もあるという。米政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮の平安北道では今年1月、廃坑になっている金鉱山に地域の住民ら数人が入り込んで金の採取作業をしていたところ、突然落盤して、3人が死亡する事故が発生した。
死亡した市民はこの金鉱山で働いていた元鉱夫で、他の仲間とともに、盗掘を働いていた。この金鉱山は閉鎖されて数年経っていたため、地盤がもろくなっており、金鉱の天井を支えていた棟木などが腐っていたという。
このような事故は、新型コロナウイルスによる経済悪化が顕著になった昨年夏ごろからしばしば起きており、これまでに数十人が亡くなっている。
また、ある朝鮮人民軍部隊も軍中央からの資金の供給が滞っていることから、数十人の盗掘部隊を編成して、金鉱山に侵入して違法な採掘を行っているという。これらの部隊も落盤事故に巻き込まれて、何十人も死亡している。
軍の場合は、中国側のバイヤーとの取引ルートをもっており、採掘した金を米ドルや中国人民元という外貨建てで、引き取ってもらっているという。国防の要の軍までが金鉱山の盗掘に手を染めていることに、金正恩最高指導部はショックを受けているとRFAは伝えている。