コロナ禍を境に、この国はどう変わっていくべきなのか。菅義偉・首相や西村康稔・経済再生担当相など国内の政治家からも意見を求められるメディアアーティストで筑波大学准教授の落合陽一氏は、NHKの番組で台湾のデジタル担当大臣オードリー・タンと対談するなど、海外の若きリーダーとの交流もある。デジタル化やダイバーシティの推進など、コロナ後の新しい社会を作っていく上で、これからのリーダーにはどのような役割が求められるのか。落合氏が語った。
* * *
ダイバーシティというテーマには、当然ながらジェンダーの問題も含まれます。しかし五輪組織委でのジェンダーにまつわる発言騒動を見てもわかる通り、日本はまだまだジェンダー・バイアスへの意識が低い。
ドイツの哲学者マルクス・ガブリエルと対談した時も、冒頭にいきなり「日本はジェンダー・バランスが最低な国だよね」と言われて、全日本人を代表して「すみません」と謝りました(苦笑)。古い世代が退場するまで変わらないかもしれない……と悲観的に考えてしまうこともあります。
一方、30代の若さで台湾政府の要職に就いたオードリー・タンは、キャリアも政治とは異質なテクノロジスト。トランスジェンダーでもありダイバーシティの象徴みたいな存在ですよね。
もちろんオードリーはものすごく優秀な人ですが、彼女をあのポジションに抜擢する蔡英文総統は本当にすごいし、変化を受け入れる台湾国民の度量もすごいと思います。それによってオードリーの才能が活かされ、台湾は新型コロナウイルスの封じ込めに成功しました。定額給付金のネット申請がうまくいかないなど、コロナ禍で行政のデジタル化の遅れがはっきりした日本とは大きな違いがあるかもしれません。
行政のデジタル化を含めて、コロナ後の新しい社会を切り拓くには、既得権益やそれぞれの省益などに縛られている構造全体をぶっ壊す必要があるでしょう。よほど馬力のある政治リーダーでないと、そんなことはできないと思います。社会を変えられる技術やアイデアはたくさんあるのですから、それを活かす政策が推進される国になってほしいと考えています。
※週刊ポスト2021年3月12日号