長引くコロナ禍の中で実施された今年の中学入試。受験生の志望校選びにも例年とは違う変化が見られるが、今年の特徴のひとつとして挙げられるのが、“伝統女子校”の人気復活だ。そこにはどんな背景があるのか──。安田教育研究所代表の安田理氏がレポートする。
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仕事柄1月中旬から中学入試の出願状況をずっと追いかけています。新聞やWebサイトでコメントを求められたり、このように原稿を書いたりするからです。大手塾やテスト会社の皆さんもコメントしていますが、出願状況のデータを基に発言していますから、そんなに大きな違いはありません。
何かしら別の切り口はないだろうか。そんなことを思いながらデータを眺めていて、あることに気づきました。ほとんど意識されていない切り口だと思います。
校名に「創立者の名」がつく8つの女子校
突然ですが、都内の学校で校名に創立者の名前がそのまま使われている学校を挙げてみてください。ヒントは「女子校」で、男子校にはありません。共学校も、かえつ有明(元は嘉悦女子。2006年から現校名)の1校のみです。
跡見学園、大妻、三輪田学園、山脇学園……くらいは浮かぶでしょうか。ほかにも4校あります。川村、中村、藤村女子、そしてここは名前とは気づかないので難しいかもしれませんが、十文字です。
女子校は小さな私塾から始まったものが多く、その時の名称がそのまま受け継がれてきています。ちなみに先に挙げた4校は明治時代の創立で、跡見学園が最も古く1875年。なんと135年以上もの歴史があります。あとの4校では中村が明治時代で、十文字、川村は大正時代、藤村女子は昭和になってからの創立です。
8校は宗教校でないことが共通点です。川村以外併設小学校がないことも共通しています。先の4校と後の4校との違いは、歴史の古さだけでなく、高校募集の有無にあります。先の4校は高校募集のない完全中高一貫校、後の4校は高校でも募集しています。先の4校は長い歴史を象徴するようにいずれも山手線内の立地(後の4校では川村がそう)です。