バイデン政権誕生後も続くアメリカの分断は、今度は民主、共和両党の人気政治家のセクハラ合戦に発展し、いよいよ泥沼化している。
民主党でやり玉に挙がっているのはニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事(63)。過去5年間に側近だった女性3人にセクハラ行為を働いていたという疑惑だ。目下3期目で、将来の大統領候補とも目される「民主党のスター」である同知事は、バイデン大統領が最も信頼する首長の一人である。そのクオモ氏のスキャンダルは、保守系大衆紙「ニューヨーク・ポスト」などが連日、鬼の首を取ったように大々的に報じている。
相次いでセクハラを訴えた3人の元側近女性は、「体を触られた」「ストリップ・ポーカー」(負けたら脱衣する宴会ゲーム)に誘われた、などと告発したが、なかでも致命的なのは、ニューヨークがコロナ禍で大混乱に陥っていた昨年6月に、25歳の部下に「私は20代女性と関係を持つことにはオープンだ」と迫った疑惑だ。コロナ対策でヒーロー扱いされてきただけに、このイメージダウンは痛い。
すると今度は3月3日、リベラル・メディアのCNNが「共和党トランプ派」の有望株で、トランプ大統領(当時)の主治医だった新人下院議員のセックス・ドラッグ疑惑を特報したのだ。被害者女性たちの証言とは違い、こちらは国防総省の監察総監名で出された公式調査報告書が根拠だから言い逃れできない。
その議員は、テキサス州選出のロニー・ジャクソン氏(53)。先の選挙で民主党候補に圧勝した退役海軍少将で、現在は下院軍事委員会に所属している。テキサス大学医学部で医学博士号を取得した後、海軍入り。軍医として各地の海軍施設で勤務したのち、イラク戦争にも参戦。帰国後、オバマ大統領(当時)にスカウトされてホワイトハウスの医務官になった。政権交代後はトランプ氏に可愛がられてトランピズムに傾倒。新設の「大統領主治医」に昇格し、大統領一家や副大統領の健康管理という重責を任された。
もっとも、すでに一度挫折も味わっている。2018年にトランプ氏から退役軍人長官に指名されたものの、上院の人事承認が難航し、自ら身を引いた。ドラッグやアルコールに関する「不適切な言動」が問題になったからだ。今回、監察総監が明らかにしたセクハラ、アルコール依存、睡眠薬常用疑惑は、当時問題となった「不適切な言動」を具体的に示した証拠というわけだ。