「油」というと、あまり健康によくないのでは──と考える人もいるかもしれない。しかし、油は人間にとって重要な存在なのだ。慶應義塾大学医学部教授の井上浩義さんによれば、脳はその3分の2が油でできている。となれば、油の摂り方を変えれば、認知症の予防にもつながるはずだ。効果が期待できると言われているのは、アマニ油とえごま油だ。
「これらに含まれるオメガ3は認知機能の改善に役立つといわれるDHAとEPAの原料になります。サプリメントで摂るより、安くて効果的でしょう」(井上さん)
さらに、これらの油には血液をサラサラにする作用もあり、これが認知症の原因の1つである脳血管疾患の予防に役立つとされる。徳島大学大学院教授の佐田政隆さんはこう言う。
「ビタミンB6が欠乏すると認知症になりやすくなるというデータがあるため、これを豊富に含むアボカドなどにかけることで、相乗効果が期待できます」(佐田さん)
DHA、EPAはもともと、いわしやさば、かつおなどの青魚の油に多く含まれている。植物油研究家の林裕之さんはこう言う。
「アマニ油・えごま油のオメガ3は、摂取すると体の中でDHA、EPAをつくるのに対し、魚油はそれ自体がDHAやEPA。青魚を食べればダイレクトな効果が期待できるでしょう」(林さん)
ダイエットや美容にいい「MCTオイル」「ココナッツオイル」は、認知症予防にも効果的だ。認知症は“第三の糖尿病”ともいわれ、ブドウ糖をうまくエネルギーに変えられなくなることが原因の1つだといわれている。管理栄養士の麻生れいみさんはこう言う。
「ブドウ糖以外に脳のエネルギーになるのはケトン体なので、ケトン体を生成しやすい中鎖脂肪酸を多く含むMCTオイルがいい。また、ココナッツオイルを1日に20〜30g摂取することで認知機能が向上したという研究もあります」(麻生さん)
※女性セブン2021年3月18日号