年に数回は両国国技館で相撲観戦。好きになった力士は安美錦と豪栄道で、昨年の照ノ富士の復活優勝時は師匠・伊勢ヶ濱親方が優勝旗を渡すというドラマに涙し、最近は「映像がない分、細かい実況が聞ける」ラジオでの相撲中継を楽しむ──そんな相撲を愛する人気モデル・市川紗椰に、相撲との出会いとその魅力を聞いた。
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相撲を本格的に見始めたのは大学生の頃です。たまたま街で力士と遭遇し、規格外の大きさとオーラに圧倒されたことで関心を持ち、国技館で生観戦。完全にハマりました。初観戦の時の、気迫みなぎる朝青龍関の迫力は今でも覚えています。
最初は歌舞伎や能に近い伝統文化の一部として楽しんでいましたが、今では競技の面白さに目覚め、完全にスポーツとして見ています。「ここで右が入れば体勢を崩せるんだ」といった技の部分だとか、「この一番はここで決まったのか」といった取組の妙とか、知れば知るほど奥が深い。そして最大の魅力は他のスポーツにはない「潔さ」。こんなにスパッと終わる競技は他にはありません。
また、相撲は「五感」で楽しめるスポーツだと思っています。和の伝統色や土俵の美しさ、鬢付け油や焼き鳥の匂いに、館内に響く音……特に最近はコロナによって観客が制限され、静かな館内にさらに音が響くようになりました。すり足の音、締め込みの摺れる音、行司の息遣いまで聞こえて感覚が研ぎ澄まされます。花道の奥から力士が肌を叩く音も聞こえ、今まで知り得なかった気合の入れ方まで伝わってきます。
また、今は拍手だけの応援です。声が出せない分拍手に力を込めたり、反対に優しい拍手で労ったり。もしかしたら声援以上に気持ちが伝わるかもしれません。最近はヤジを含めて行きすぎた声援もあったように思うので、これを機に誰もが気持ちいい応援を考えるきっかけとなれば良いなと思っています。
【プロフィール】
市川紗椰(いちかわ・さや)/1987年2月14日生まれ。愛知県出身、米国・デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。身長168cm。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』(集英社刊)が好評発売中。
取材/鵜飼克郎 撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2021年3月19・26日号