中国の警察当局は2月下旬、昨年6月の中印国境で起きた両国軍の衝突での中国軍の死傷者数について「4人死亡、1人負傷」であり、死亡した4人の兵士について勲章や名誉称号を贈ったと発表した。これに対して、中国のSNS上では「それはウソだ。少なくとも死者数は60~70人であり、作戦は失敗した」などの書き込みが相次いだが、当局側は「英雄烈士保護法」違反容疑で市民ら6人を逮捕、起訴していたことが明らかになった。同法で、逮捕・起訴されるのは初めてだ。
ネット上では「インド軍は中国軍の死者数を40人以上としている。それに、衝突から8カ月も経って、死傷者数を発表するのはおかしい。軍は戦果を誇示したいだけであり、疑問の声を上げた市民を逮捕するのは非合法だ」などと逮捕に反発する声が強まっている。中国メディア「澎湃新聞」が報じた。
ことの発端は、中国人民解放軍機関紙「解放軍報」が2月下旬、昨年6月に中印両国の国境が接するヒマラヤ山脈のガルワン渓谷で起きた武力衝突で、4人が死亡、1人が重傷と報じたことだ。同紙は4人が死亡した理由について、「同僚を救出するためであり、重傷を負ったのは団長(連隊長)階級の士官」と伝えた。
これについて、中国のSNS「微博(ウェイボー)」で250万人のフォロワーを持つ仇子明氏(ユーザー名は辣筆小球、38)が「犠牲になった4人は手柄を立てるために救出に行った。救出のために行った人でさえ亡くなったから、救出は失敗したはずだ」と指摘。この根拠として、インドのシン道路交通担当国務大臣(日本の副大臣に相当)が衝突直後に、「中国側の死者は少なくとも40人に上っている」と指摘したことを挙げた。
江蘇省の南京市警察当局は仇氏を「英雄烈士保護法」や「違法な言論」の疑いで逮捕したうえで、仇氏の投稿を削除し、微博アカウントの利用を1年禁止した。このほか、北京市や貴州省、四川省など各地に住む5人の書き込みについても「悪意で事実をわい曲した」「英雄烈士を中傷した」として、5人を逮捕している。