コロナはドラマや映画にも大きな影響を与えている。撮影現場での感染防止が課題になることはもちろん、表現内容に関しても、例えば「3密シーン」や「口角泡を飛ばす激論」などは、読者に不安感や違和感を与える可能性がある。昨年放送された『半沢直樹』などは、登場人物が顔と顔をくっつくほど近づけて怒鳴り合うシーンも見せどころのひとつだが、制作スタッフがコロナ感染して放送が延期されたり、エキストラがロケ現場の3密を告発するなど、現場の混乱が作品内容とリンクして物議をかもしてしまった例もある。
『週刊ポスト』(3月8日発売号)では、エンタメ業界やアートの世界にコロナがどのような影響を与えているかを各界の第一人者の証言で報じている。そこにも登場した脚本家で映画監督の尾崎将也氏に、改めてコロナのリアルとフィクションの関係について聞いた。尾崎氏が脚本を担当した作品には、『アットホーム・ダッド』『結婚できない男』『特命係長 只野仁』『梅ちゃん先生』などヒット作品が多数。週刊ポストでは、今月放送予定の『東京地検の男』における取り調べシーンの逸話や、コロナ禍でラブシーンをどう描くべきかについて、プロならではの意見を披露している。脚本家の立場から見ると、やはりコロナ時代に書きやすい作品と書きにくい作品があるようだ。
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『結婚できない男』のようなコメディであれば、コロナ禍の設定で書いても、それなりにおもしろくできると思います。例えば、「マスクしろ!」とか「3密です!」といったセリフをギャグとして自然に取り入れやすいですし、好きじゃない異性に言い寄られるシーンならば、「ソーシャル・ディスタンスが必要ですよ」と言い訳して距離を取るとかね。コメディであれば、新しい生活スタイルや言葉を逆手にとって演出に使うのもアリだと思います。
コロナ禍を真正面から捉えた医療ドラマなども、コロナ禍を活かしやすいジャンルと言えるでしょうね。
一方で、学園ものは描きにくくなっていると思います。教室に生徒が30人いる状況は3密そのものですが、だからといって他の生徒がいなければ不自然になってしまうから、制作サイドが「今はちょっとやめておこう」という判断になりやすいと思います。学園ものに代表される日常生活を描いたドラマの多くは、コロナ禍を反映させにくいですね。同じ空間に複数の人物が必要ですし、人間関係を描くには3密でないとおかしい場面もあるから、制作現場が大変になります。