放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、中学生の頃から知る宮藤官九郎との思い出について綴る。
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芸能界広しと言えども、自分の学校の後輩となると話は早いし、気は合うしでなかなか可愛い。私という“才能”の出現以来、業界的にはなんだかんだ日芸(日大芸術学部)がでかい面をしている。皆なおバカなんだが愛嬌があって、なにより創作力がある。クリエイティブであれば日大くらいの脳味噌が丁度いい。学力で人は笑わない。昭和42年、私が日芸(江古田にある)に入った時の入試問題が「ナス、キュウリ、キャベツ、インド人。仲間はずれはどれ?」私の友人はこれを答えられずに他校へ行った(冗談ですよ)。
こんな学校の後輩達に声を掛け、2月23日、有楽町よみうりホールで「オール日芸寄席~おっと天下の日大事~」を開催した。前売は即完売。50%しか席を売れなかったが、600人近い人が笑い転げてくれた。この禍中、みんな笑いたかったのだと思う(3月8日から配信します)。
メインは私とあのクドカンこと宮藤官九郎の頭が悪すぎるトーク。大絶賛放送中の『俺の家の話』ではなく、ふたりで「俺の学校の話」トーク。なにしろクドカンが仙台の中学生だった頃から知っている。例の事件──“たけし氏が深夜 講談社を訪れちゃった事件”などがあり、私までテレビ番組の台本仕事が激減。なんとか喰いつながなきゃと、生きる力のある私は札幌、名古屋、仙台に番組を作り、そこを週末はまわっていた。
仙台の番組は素人のお笑いオーディション番組。そこへ毎回“ネタ見せ”に来る鼻水を垂らした中学生がいた(これがのちのクドカン)。4人位でやって来ては、私やディレクターの前でコントをやり、オチないと最後に一斉にパンツを下ろして「チャン、チャン」と言う。
「僕、これはテレビなの。テレビでチンチン見せちゃいけないの」。言ってきかせても2週後また違う仲間をひきつれネタ見せ。たしかに違うコントをやったが、最後、私が笑ってないと見るやサッとパンツを下ろし「チャン、チャン」「バカヤロ―ッ、帰れ!」これから5年後か。私がいると思って日芸に入ってきた。頭が悪すぎるだろ。私はとっくにもう働いているっつーの。
大学へも行かなくなって毎日昼、私のラジオを聞いて過ごした。それから「大人計画」ヘ入り、何年かして私とこの業界で会った。「あっセンセー、僕覚えてますか」「覚えてる訳ねぇだろ」すかさずクドカン、パンツを下ろす。私が股間をみつめ「あぁ、仙台の!?」チャン、チャン。
この日の「オール日芸」、他に志らく、一之輔、白鳥らも出演。全員私への愚痴でした。
イラスト/佐野文二郎
※週刊ポスト2021年3月19・26日号