北朝鮮では新型コロナウイルスの感染防止などで国境を封鎖しており、中国から食糧の供給が途絶えていることから、食糧不足が深刻化。北朝鮮当局は市民に対して、ウサギやブタ、ヤギなどを育てるよう指示していることが明らかになった。市民らはウサギ小屋や豚舎などを建設するため、資金のほか、労働力も求められ、ただでさえ苦しい生活がますます苦しくなり、当局側の無為無策に怒りを爆発させているという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮では昨年末に1キロ6000ウォン(約60~70円)だった米価が旧正月(今年は2月12日)前後には1万元前後に急騰。トウモロコシの価格も昨年末は1キロ2000ウォンだったものが3500ウォンに値上がりしており、庶民は慢性的に腹を空かせている状態だという。
このような状況を打開するために、北朝鮮当局は市民にウサギなどの家畜を育てるよう指示を出している。同国北西部の平安北道の住民はRFAの電話取材に応じて、「最近、(中国との国境地帯の)新義州市の漁業事務所が、2月初めに始まったプロジェクトであるウサギ小屋の建設を急いでいる。漁業事務所は魚を捕まえなければいけないのに、当局が国営工場や企業に独自の家畜事業を運営するよう命じたためだ」と語っている。
また、平安南道の市民からも「我々の場合は、豚やヤギを育てるよう命令されているが、だれも相手にしていない。人々の生活が改善するどころか、この命令はすでに慢性的な苦難に陥っている人々の負担を増やしているだけだだ」との指摘も出ているという。
というのも、育てたウサギやブタなどの家畜は、自分達の口には入らず、朝鮮人民軍の兵士の食糧として拠出しなければならないのだ。
国連食糧農業機関の2019年のレポートによると、北朝鮮の人口の約44%に当たる約1100万人の人々が慢性的な栄養不足に陥っており、特にタンパク質摂取量が低いという。