2011年3月11日の東日本大震災から10年。あのとき注目を集めた人々のその後の姿を追った──。
福島第一原発で発生した事故を分かりやすく解説し、東電の事故対応を「まったくなっていない」と批判する姿勢が視聴者から支持されたNHKの水野倫之解説委員は、今も福島取材を続けている。
「この10年は、あの世界最悪レベルの原発事故の処理がいかに困難かということを思い知らされた日々でした。いまこそ廃炉計画について“このままでいいのか”と振り返る時期でもあると思っています」
そう語る水野氏は、今年2月にも福島第一原発の構内に入って取材した。
「原発事故が発生してからはずっと局内にいて、少し仮眠をとってはスタジオに入るという状態でした。合間を縫って自宅の家族に『しばらく帰れないから実家に帰ったら?』と連絡すると、『うちが荷物をまとめて出るところを近所の人に見られたら“水野家が避難しているから東京も危ない”と思われてパニックが起きるかもしれないから絶対にできない』と言われて、世の中が疑心暗鬼の状態になっているということを知り、正確な情報を伝えなければという思いを強くしました」
3.11を契機に災害報道も変わり、先月の福島県沖地震でも、「原発」について頻繁に報じられるようになった。
「1年に1回、各局の原発報道に関わる記者とデスクが東京に集まり、原子力の今の課題について理解を深める“原発会議”を開催しています。我々の専門性をより高め、今後も視聴者に正確な情報を速く伝えていければと考えています」(水野氏)
※週刊ポスト2021年3月19・26日号