コロナ禍で病院にかかりづらい状況で常備薬に頼ることが多い昨今。薬の効き目に食事内容が関係するケースがあることを知っておきたい。銀座薬局の代表で薬剤師の長澤育弘さんが解説する。
「まず注意したいのが、コーラやエナジードリンクなどカフェインが含まれる飲み物です。疲労感を覚えたり体調が悪くなったりすると、これらを飲み、その後に市販のかぜ薬を服用するケースがみられますが、体調を悪化させる原因になる。
例えば、解熱鎮痛剤やせき止め薬には、鎮痛や呼吸を楽にする成分として『無水カフェイン』が含まれていることが多い。同じくカフェインが含まれるコーラやエナジードリンクでのむと、カフェインの過剰摂取になってしまい、頭痛やめまい、不眠にイライラなどの副作用が出やすくなります」(長澤さん・以下同)
市販のアスピリン含有の鎮痛剤を常用している場合は、梅干しなどすっぱいものは控えたい。
「市販の一部の解熱鎮痛剤には胃を保護するためにアルミニウムが配合されていますが、梅干しなどのクエン酸が結合すると通常排泄されるはずのアルミニウムが体内に残留してしまう。腎臓に問題がある場合はアルミニウム脳症になるリスクがあります」
病院でもらう処方薬をのむときは、さらに注意が必要だ。
「処方薬は症状に合わせて種類や処方量が決められています。市販薬よりも強い成分が含まれていることも多いので、成分バランスが崩れると市販薬よりも副作用が出るリスクが高い」
代表的なものは脳梗塞や心筋梗塞などの予防や治療に使われる抗血栓薬と納豆の組み合わせだ。
「抗血栓薬はワーファリンカリウムと呼ばれる血液をサラサラにする成分で、不整脈や脳卒中の予防などに使われますが、ビタミンKが多い納豆を一緒に摂ると働きが阻害されて、血栓が作られやすくなります。のむ前後に納豆を摂取するのは控えるようにしましょう」
少しでも症状をよくしたい一心で摂取する栄養素にも、意外なリスクが潜んでいる。
「骨粗しょう症の治療でカルシウム増強薬をのんでいる人が、カルシウムを増やそうと牛乳を大量に飲むのは推奨できない。血液中のカルシウム濃度が上がり、高カルシウム血症になることがあります。のどの渇きや多尿といった症状のほか、ひどい場合は昏睡状態に陥るケースもあります」
普段なら野菜は積極的に食べたいところだが、かぜ薬の効き目を低下させる可能性がある。
「かぜ薬をのむのなら、キャベツや白菜、ブロッコリーは避けましょう。アブラナ科の野菜が含有するグルクロン酸は、かぜ薬に含まれる鎮痛成分のアセトアミノフェンを分解してしまいます」
毒にも薬にもなるとはよく言ったもの。食品の力を最大限生かした食べ方をしたい。
※女性セブン2021年3月25日号