地震を防ぐことは不可能だが、被害を軽減させることはできる。そのために重要なのは、地震が起きる大まかな場所や規模、時期などの予測だ。そのヒントといえる現象は、起きていたのだろうか──。
地震の前触れとして巷でよく知られているのは、海の生物たちの「異常行動」だ。
たとえば近年、静岡県の駿河湾で水揚げされるサクラエビの歴史的不漁が続いているが、武蔵野学院大学特任教授・島村英紀さんは、「大地震の予兆かもしれない」と言う。
「サクラエビは微弱な電流を感知する“センサー”を持っていて、エサとなる生物が発する電気を頼りに捕食します。海底の地中で岩盤の動きが活発化すると、電流や地磁気(地球が持つ磁気)が発生したりするという研究もあります。大地震を引き起こす、駿河トラフで〝異常〟が起きていて、それがサクラエビの生態に影響を及ぼし、不漁につながっていることが考えられるのです」(島村さん)
また、東日本大震災の7日前には、茨城県の海岸に50頭以上のイルカが打ち上げられて死亡していた。イルカをはじめ、ナマズや深海魚のリュウグウノツカイといった魚類も、サクラエビと同様の敏感なセンサーを持っているという。こういった生物の異常行動が大地震の発生前に確認された例は枚挙にいとまがない。
この2月15日には伊豆諸島の三宅島で大量のイワシが海岸に600mにわたって打ち上げられているのが発見された。
「三宅島の海底でも“異変”が起きているのかもしれません。駿河湾や三宅島というのは、位置的に『南海トラフ地震』と関係している可能性もあるので、ほんのわずかな変化でも注視する必要があります」(島村さん)
神奈川県の三浦半島では、昨年6月から「異臭騒ぎ」が相次いでいる。
「ゴムが焼けたようなにおいやシンナーのようなにおいがします」などの通報が地元の消防局に殺到し、その後も毎月のように異臭が発生している。
10月には横浜市まで広がり、JR横浜駅では利用客が異臭を訴えたことで中央南改札口が約20分間閉鎖された。
「三浦半島には『活断層』が多い。異臭の原因は、活断層が動いたことで地下深くのガスが漏れてきたり、かつて油田地帯だったことを考えると、石油のにおいが上がってきたという可能性もあると思います。
三浦半島と房総半島を繋ぐような形で、東京湾口には相模トラフが存在し、ここでかつて元禄関東地震(1703年)や関東大震災(1923年)といった巨大地震が発生しています。そこでいま、活断層が動いているとなると、いつ大地震が起きても不思議ではありません」(島村さん)