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密を避ける生活が子供の成長を阻害 マスクの着用も精神的な負担に

何気ない声かけが子供のストレスに(イラスト/たばやん)

何気ない声かけが子供のストレスに(イラスト/たばやん)

 2020年に自殺した小中高生が、過去最多の479人にのぼることが、文部科学省の分析結果より明らかになった(2021年2月15日公表)。2019年と比べて4割以上増え、コロナ禍による生活環境の変化が子供たちに深刻な影響を与えていることがうかがえる。

『子どものからだと心 白書2020』の「速報!コロナ緊急調査」(野井真吾ほか)によると、昨年は長期の自粛期間があったことで、子供たちに視力の低下や運動不足による体力の低下などが増えた、とある。このような身体的不調だけでなく、やる気の低下やうつ症状など、心に不調をきたす子供も激増している。なぜこのようなことが起きているのだろうか──。

「本来子供は、“3密”(密閉・密集・密接)の中で育てることこそ理想なんです。友達と取っ組み合ったり、対面で会話をしながら他人との距離を覚えていくからです。コロナ禍では、子供が人とかかわり合う上で必要不可欠な“密”が制限されています。そのため、健全な成長が阻害されているのです」

 と、帝京短期大学生活科学科学科長の宍戸洲美さんは言う(「」内、以下同)。

 さらに、マスクの着用も問題だ。同じく『子どものからだと心 白書2020』の「速報!コロナ緊急調査」によると、休校明けに子供たちが困っていることとして「マスクの着用」が49.4%と高く、大人が思う以上に、子供に負担をかけていることがわかる。

「子供は相手の表情を見て、何を考えているのか推測します。さらに乳幼児は、大人が咀嚼している口元を真似て噛んだり飲み込んだりします。保育の現場ではいま、保育士もマスクをしているため真似ができず、口の中に食べ物を入れたままの乳幼児が増えているといいます」

 マスクによって先生や友達とのコミュニケーションがとりづらくなると、言葉も理解しにくくなり、学習する上でも精神的な疲れにつながっていくのだという。

“親の余裕”が子供の心を安定させる鍵に

 一方の親も、学校行事が中止となったことで、子育てについて相談できる人と会う機会がなくなり、ストレスとなっている。さらに、失業などによる生活不安が親から余裕を奪い、そのはけ口として、家庭内の弱者である子供へ、攻撃が向けられているという。

「子供が安心して過ごすためには、親が精神的な余裕を持つことが大切。親のストレスが子供へのきつい態度や言葉に表れるからです」

 たとえば、人と対面できなくても、オンラインなどで相談をしたり、イライラしていると感じたら子供から少し距離をとるなどの対策を講じてみよう。そして、普段のささやかな声かけや態度から見直してみてはいかがだろうか。

【プロフィール】
宍戸洲美さん/帝京短期大学生活科学科学科長・教授。東京都公立小学校養護教諭として27年間勤務。著書(編著・共著)に『養護教諭の役割と教育実践』(学事出版)など。

取材・文/番匠郁

※女性セブン2021年4月1日号

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