チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世、その秘書ら側近や最高幹部のあわせて10数人が3月6日、インド北西部の山岳地帯、ヒマチャルプラデシュ州ダラムサラのチベット亡命政府本部近くの病院で、新型コロナウイルスのワクチンを接種した。
ダラムサラに住むチベット人らの間で新型コロナウイルスの感染が急拡大したことから、85歳と高齢のダライ・ラマのウイルス感染の可能性に危機感を抱いたインド政府が、ワクチンの提供を緊急に決めたという。複数のインドメディアが報じた。
ダライ・ラマらが接種したワクチンは英オックスフォード大学と製薬会社のアストラゼネカが共同で開発し、インドで生産されたワクチンで、2月25日に世界保健機関(WHO)の緊急使用リストに登録されたばかりだった。
ダラムサラでは3月4日までの1週間で、チベット人61人の感染が確認されたほか、2月下旬にもダラムサラ近くの修道院で154人の僧侶がウイルス感染したと診断され、地元住民はパニック状態に陥ったという。
チベット亡命政府は、今後も医療従事者を含む413人のチベット人が予防接種を受け、248人の高齢者がインド政府からワクチンを提供される予定であると発表している。しかし、この数はダラムサラのチベット人の人口のわずか0.5%に過ぎず、チベット人全員が接種を受ける予定は決まっていない。
インド政府のチベット問題専門家によると、インドなどの亡命チベット人居住地域の生活レベルは極めて貧弱であるという。
また、インド全体では感染による死亡者はすでに15万人以上に上っており、感染者数も世界2位の水準にあることから、亡命チベット人の感染率も今後、高くなることが考えられる。
今後の対応について、ダライ・ラマは「私がワクチンを接種したのは、チベットの皆さんが早く接種してくれるよう望んでいるためでもある。是非、積極的に接種してもらいたい。そのために、チベット亡命政府もできるだけのことはするつもりだ」と表明している。