実は宮内さん自身、前述のアイドルグループとは別のグループに所属していた時、一歩間違えたら反社会勢力に取り込まれたかもしれない経験をしていた。打ち上げのゲストに、と呼ばれて行ったらマルチビジネスの会合で、そこで物を買わされたのだ。また、誘われて行った飲食店のパーティーで「俺の女になれ」と囁いてきた男が後日、ニュースを見ていたらぼったくりバーの店員として逮捕されていた。こうした危うい人々とまったく付き合わない、というのは難しかったが、宮内さん自身は一線を超えたことはないと言う。
「リッチな人に見つけてもらって、後からその人が悪い人だったと気がついても、もう元に戻れません。結局、アイドルになりたい、ということが最終目標になっちゃってる子が多いから、おかしなことになりやすい。人から認めてもらいたくて、色んな人に会いに行くけど、私たちをアイドルと認めてくれる人は、私達を利用しようとか、欲望の吐け口にしようという人ばかり。でも、今は『アイドルです』といえば、誰でもアイドルになれる時代なので、よく考えずに飛び込んでくる子も多い。アイドルになりたいという若い子達にも、こうした現実をもっと知って欲しい」
アイドルになることが最終目標だと、自分をアイドルと呼んでくれる人に人生をコントロールされてしまいかねない。その危うさは、もっと広く知られるべきだし、アイドルを預かる大人は真剣に取り組むべき問題だろう。
逮捕された元アイドルは、金の魅力に取り憑かれて率先してやっていたのか、嫌々やっていたことがいつの間にか「稼げる仕事」になり、辞められなくなったのか。宮内さんが目撃したような経緯をたどって、詐欺グループの一員となってしまったのか。そこは判然としないが、「最終目標がアイドル」になってしまっていたことが、彼女の人生を狂わせてしまったのだとしたら、夢の果てがかくも悲惨で残酷なのかと、言葉を失うしかない。