アイドルブームだった2010年代、芸能事務所に所属しているだけでも2000人はくだらないアイドルがいた。さらに、ご当地アイドルや地下アイドルも含めると、日本で活動する1万人を超えていたとも言われている。ブームが去ったいま、彼女たちの多くは元アイドルとなり、ほとんどの人が地に足をつけて新しい仕事や勉学に向かっている。ところが、アイドル時代に知り合ってしまった「怪しい人たち」と縁を切れず、暗闇へと転げ落ちてしまう人もいる。ライターの森鷹久氏が、元アイドルが反社会的勢力と結びついてしまうことがある背景についてレポートする。
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元有名アイドルグループに所属していた女性が、詐欺の疑いで逮捕された。出会い系サイトなどで知り合った男性に「必ず儲かる」などと言い、投資助言指導料などを騙し取っていたというのだ。逮捕された事案だけでなく、出会い系サイトやSNSを使って男女を積極的に勧誘を繰り返していたとも見られている。
なぜアイドルにまでなった女性が、詐欺に手を染めることになったのか。そこには、アイドルが多すぎる実情と、彼女たちが弱い立場に置かれていることが関係しているのかもしれない。
今回、筆者の取材に答えてくれたのは、2年前まで関東にある大手芸能プロダクション傘下の事務所に所属し、アイドル活動を行っていた宮内あすかさん(仮名・20代)。宮内さんは高校生の頃、テレビで活躍するアイドルに憧れ、芸能事務所へ履歴書を送ったりオーディションに参加したが、届くのは不合格の知らせばかり。
だがその後、とある雑誌で募集されていた「読者モデル」に応募したところ、数日後には編集長から「合格」との電話がかかってきた。小躍りした宮内さんだったが、まずここに、最初の「落とし穴」があった。
「合格は合格なんですが、一番下のレベルの合格。トップは即表紙にもなれて、ファッションページで活躍できる。私の場合は、たとえ撮影があったとしてもギャラもなければ、ファッションページなんて全然呼んでもらえない。(トップの)読者モデルになるには、ウォーキングを学んだり、編集長のレクチャーも受けなければならず、その授業には年間何十万円もかかるんです」