3月21日投開票の千葉県知事選。話題になったのは泡沫候補のはしゃぎようだった。
中でも、「千葉県全体を夢と魔法の国にする党」代表の河合悠祐氏はピエロのメイクを施し、街頭演説ではダンスを踊って耳目を引いた。本人は投開票前に、こう語った。
「今が人生で一番楽しい。永遠にこの時が続けば良いのに。選挙戦はまさに夢のような時間です」
京大卒で現在はYouTuberとしても活動する河合氏は、出馬の目的を「知名度を高めるため」と公言し、県知事選出馬は今後の政治活動への「顔見せ」的意味合いもあるという。
昨今、河合氏をはじめとしたYouTuberにとって、選挙が「金稼ぎの場」としている候補がいることも否めない。
300万円の供託金を支払った候補者たちに与えられるのは、NHKや地元TV局で流れる政見放送5分の枠だ。その映像を自身のYouTubeチャンネルで流せば、再生回数に応じて広告収入が入るため、泡沫候補者は政見放送でいかに目立つか躍起になる。SNSを通じて寄附を募るのも資金調達の手段となっている。
千葉県知事選に立候補した後藤輝樹氏は、2020年の東京都知事選の政見放送で性器名を連呼し、顰蹙と一部の熱狂的な支持を集めた。
都知事選前は2万人前後だったチャンネル登録者は10.9万人に達し、都知事選の政見放送の再生数は400万回超。「供託金以上に稼いだのではないか」と問うと、後藤氏はこう答えた。
「広告収入が増えたとか、供託金がペイできたとかいたずらに口にするとそれを目当てに立候補される方が増えてしまいます。僕はそういう邪な気持ちで出馬したわけじゃない。ただ、政見放送などを通して共感したり、応援したいと思っていただけたらお金は集まったりするのかなとは思います」
ホンモノの為政者か、道化師か。それを見分けられないほど有権者はバカではないだろう。
取材・文/柳川悠二
※週刊ポスト2021年4月2日号