さる3月初旬、議員会館の自民党議員の事務所ポストに1通の文書が投げ込まれた。受け取った議員からは「政局の幕開け」「菅おろしの序章じゃないか」と波紋が広がっている。
文書では〈衆議院議員は、今年の10月21日に任期満了を迎えるため、今年中に総選挙が行われることになります。また、自民党総裁も9月30日で任期満了となります〉とあり、さらに10月21日の衆院の任期満了まで臨時国会を開き、その日に衆院を解散した場合は「11月28日投開票」が〈公職選挙法で認められる最も遅い総選挙の日程〉と指摘されている。
これがなぜ、“菅おろし”と受け止められているのか。自民党中堅議員は、「総選挙を最大11月28日まで引き延ばせるとは知らなかった。それなら、9月の総裁選で新総裁が誕生すれば、首相就任後に国会で所信表明を行なってから解散・総選挙という日程が可能になる」と語る。
政治ジャーナリスト・藤本順一氏が指摘する。
「文書の意図は、総裁選で菅総理のクビを挿げ替え、新しい看板で総選挙を乗り切ろうということ。それまでは菅首相の解散権を封じ込めなければならない。それを日程表だけでピンポイントで訴えている」
解散権封じの動きには菅首相も黙っていない。
「秋までの任期なので、情勢を見て考える」
首相就任から半年の3月16日、解散・総選挙についてそう語り、政府側からは「4月解散」説が流されている。
巻き返しの転機となったのは、米国のバイデン新大統領との首脳会談(4月9日予定)が決まったことだ。
「逆風続きの菅総理は、各国首脳の中で一番乗りでバイデンに会えることを『外務省はよくやった』と非常に喜んでいる。バイデン大統領から東京五輪への協力を取り付けられれば、開催に大きく道が拓けるし、支持率を盛り返せると考えている」(菅側近議員)