2年ぶりに熱戦が繰り広げられている第93回選抜高校野球。春夏通じて初めて甲子園の土を踏むのは、離島からの出場で注目を集めた大崎(長崎)を筆頭に、21世紀枠の4校を含めた計8校。その中の一校、聖カタリナ学園(愛媛)を率いる“松坂世代”の監督は、知る人ぞ知る闘将だった。『松坂世代、それから』などの著書があるスポーツライターの矢崎良一氏がレポートする。
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センバツ甲子園大会5日目──。優勝候補にも挙げられている東海大管生(東京)と対戦するのが、初出場の聖カタリナ学園だ。1925年開校の名門女子校だったが、2016年に男女共学化。これに伴い創部された新興野球部が、わずか5年にして甲子園出場を果たした。
この聖カタリナを率いるのが越智良平監督。1980年生まれ。野球界で言うところの“松坂世代”になる。この世代も40歳となり、高校野球の監督としては若手から中堅どころに差し掛かったあたりか。今大会にも出場している敦賀気比(福井)の東哲平監督が、2015年センバツを制覇し、この世代初の甲子園優勝監督となっている。
とはいえ、今大会出場校の中でも、明徳義塾(高知)を率いる甲子園通算51勝の馬淵史郎監督や、春夏7度の優勝を誇る大阪桐蔭・西谷浩一監督、プロ野球経験者の常総学院(茨城)・島田直也監督のように、高校野球ファンなら誰もが顔と名前が一致するような知名度はまだない。
「自分の名前云々ではなくチームとして、いつかはそういうところまで行きたいという気持ちはあります。でも今はまだ、(明徳の)馬淵監督なんかに向かっていってはガツンと跳ね返されて、それでもなんとか食い下がって…とやっているうちに少しでも力を付けて、というような段階ですね」
越智はそんな素直な思いを口にする。それでも、そんな無名の監督の戦いぶりを注目し応援する人が全国に数多くいる。昨秋、四国大会で準優勝しセンバツ出場を確実にした時には「あの越智が甲子園に出るのか」と多くの野球関係者が喜んだという。それは、越智がこれまでの野球人生の中で築いてきた人脈の広さに他ならない。
聖カタリナの部員名簿を見ると、地元愛媛の出身者だけでなく、関西や、遠く神奈川からの越境入学者もいる。まだ甲子園未出場の新興チームとしては珍しいだろう。これは、越智の高校時代のチームメイトが神奈川の硬式チームの監督をしていることから、「越智に預ければ間違いない」と送り出してくれているのだという。
それほどの人望を集める越智良平とは、どんな人物なのだろう?