豊かな自然に育まれた美食と、湧き出る温泉に恵まれた東北地方は、旅をするにはもってこい。秋田県出身のフリーアナウンサーの相場詩織さんが、「和服で楽しむ“みちのくの小京都”」を紹介する。
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秋田ではとてもゆっくり時が流れています。しんとした静寂に響く雪の音や風が運ぶ季節の香り……四季折々の空気に包まれると心がほぐれ、秋田に生まれてよかったと思うんです。
抱返り渓谷県立自然公園内にある『夏瀬温泉 都わすれ』は山の一軒宿。全室かけ流し温泉の露天風呂付きで自分の時間をゆったり過ごせます。4月にはソメイヨシノ、雪解けの5月を迎えると宿名でもあるピンクや紫のミヤコワスレが景色を彩ります。都会の喧噪を離れ、ミヤコワスレの花言葉“しばしの憩い”を味わってください。
みちのく小京都・角館は桜や紅葉の名所ですが、武家屋敷の黒壁と雪とのモノトーンのコントラストは水墨画のように美しい。着物が映えるので、男性も着物ではんなり散策はいかがでしょうか。『きもの旅 しゃなり』の男性用着物は渋い色味で、大人の男性が装えば色っぽい。武家屋敷通りは由緒ある青柳家など見所も多く、着物姿で歴史探訪の気分も盛り上がります。
武家屋敷通りからほど近い『手打そば さくらぎ』は地元に愛されるお店。田沢湖のそば粉を使った十割そばは噛むほどに芳醇な香りと味が口に広がります。春には桜そば、夏にはしそ切りそばや鮎の天ぷらなど、食から季節を感じられるのも魅力です。
デザートには『お菓子のくらた』の元祖しょうゆソフトクリーム。私はこの味を求めて角館へ来るほどの大好物です。地元の安藤醸造の醤油を使い、キャラメルやみたらしだれのような濃厚な甘塩っぱさです。
秋田美人は容姿端麗な女性を連想されますが、季節の移ろいを五感で楽しみ、美しい景色やおもてなしに豊かな心を育む人が“真の秋田美人”と考えています。ゆったりとした秋田でぜひ「秋田美人」になってください。
●夏瀬温泉 都わすれ(仙北市田沢湖卒田字夏瀬84)
1人1泊3万1500円~(3月平日、2名1室利用・2食付き、消費税・入湯税込み)
【プロフィール】
相場詩織(あいば・しおり)/秋田県出身。静岡の局アナウンサーを経て、現在はフリーアナウンサーとして東北を中心に多方面で活躍。
撮影/小松潤 取材・文/渡部美也
※週刊ポスト2021年4月2日号