「考えられる最高レベルの感染症対策をとっています。まず、感染者を乗船させないため、乗組員だけでなく、乗客全員に必須で事前のPCR検査を実施しています。船内では各所にサーマルカメラを設置し、体表温度を計測するなど感染防止策を徹底しています」(郵船クルーズ広報担当)
昨年2月に700人超の感染者を出した「ダイヤモンド・プリンセス」の集団感染発生から約1年。その間、日本最大の豪華客船「飛鳥II」は約300日間すべてのクルーズを中止し、日本外航客船協会のガイドラインを基に独自の感染症対策プランを策定した。船内にはPCR検査もできる検査チームも配置。
昨年11月2日の運航再開時、郵船クルーズの坂本深社長が「万一の船内感染が生じてもダイヤモンド・プリンセスのような感染拡大は起こらないという自信を持つまでに対策を重ねました」と話したように、拡大防止のためのゾーニング、感染者発生時の対応を適切に定め、乗客数も平常時(872人)から定員数を制限している。だが、向かい風はまだ強く吹き続けている。
「年明け1月8日に2度目の緊急事態宣言が1都3県に発令され、その後の再延長も受け、2月~3月中旬に予定していたクルーズはすべて中止しました。現在はクルーズ再開に向けて万全のコロナ対策と準備を進めています」(同前)
本誌・週刊ポストは宣言発令前の昨年12月28日出航のクルーズを取材した。あらゆる場所でソーシャルディスタンス確保の対策がとられ、深夜も手すりやドアを消毒する乗組員の姿が見られた。「一丸となって“できることは何でもする”の姿勢で取り組んでいます」(同前)
今年、就航30周年の「飛鳥クルーズ」。第3波を乗り越え、“新しい船旅様式”で新時代を切り拓けるか。
撮影/太田真三 取材・文/上田千春
※週刊ポスト2021年4月2日号