東北新社やNTTによる高額接待問題が次々と明らかになっている。そして同時に、総務省が放送と通信の巨大な「電波利権」を牛耳っていることも浮き彫りになった。
日本の放送や通信事業などの電波ビジネスは、欧米のような“電波オークション”は行われず、総務省が無料で割り当てる形となっている。そのため、新たに電波が欲しい事業者や、すでに電波を持っていて既得権を守りたい事業者が、総務省の役人や大臣の接待を繰り返すのだ。
総務省の電波割り当てで最も恩恵を受けてきたのは大手新聞社やテレビ局である。報道機関が電波利権をもらえば行政に頭が上がらなくなる。総務大臣時代から放送・通信行政の制度改革を進め、“電波のドン”として大きな影響力を持ってきた菅義偉・首相は、それをメディアコントロールに利用してきた。
総務大臣時代に関西テレビの『あるある大事典II』の納豆データ捏造が大問題となると、菅氏は「電波停止もありうる」と発言して行政指導としては最も重い警告を出した。TBSの『朝ズバッ!』でも不二家に関する捏造報道が起きると、放送局が事実と異なった報道をした場合、総務大臣が放送局を行政処分できる内容の放送法改正案を提出した。
元日本テレビディレクターの水島宏明・上智大学文学部新聞学科教授が振り返る。
「放送法改正案は成立に至らなかったが、当時の放送局の上層部が『菅氏は手強い』と感じたことは事実です。不祥事を理由にそれまで以上に監督官庁が放送内容に介入する辣腕ぶりを発揮しました。結果として放送局の萎縮を招いて報道の自由、表現の自由を後退させたと評価できます」
その手強い菅氏が首相に就任すると、日本テレビの執行役員、フジテレビの会長や社長などが首相と食事を共にしている。
電波の割り当てを受けるテレビ局の経営者が、費用を会社持ちで“電波のドン”と宴席を持っていたとすれば、利害関係者による接待と同じだ。
会食について日本テレビは、「当日は、菅首相に対する取材会合でした。費用は、出席メンバーで分担致しました」(社長室広報部)、フジテレビは「詳細についてはお答えしておりません」(企業広報部)とのことだった。